2024年4月2日火曜日

4月2日、9日 エントランスの君子蘭

今年も君子蘭が、艶やかに咲き誇っています。
冬越しの廊下から、エントランスに、
賑やかです。


エントランスの一番上が君子蘭、

アプローチにはゼラニウム、

そして、なんとか冬越ししたサルビア


春本番のエントランス、春を謳歌。

9日
雨の早朝、
新聞を取りに出たら、
雨に濡れた君子蘭の艶やかさが一層増し、
もみじの若葉が冴えていました。


 

2024年3月21日木曜日

3月21日 春です。池の鯉と君子蘭

春です。
池の鯉が活発に泳いでいます。 
無事、冬を越え、
春を迎えた池の鯉たち、
春の光に輝いて見え、
餌を求め、泳ぎ回るようになりました。

昨年と比べ、ひと回り、
また大きくなり、
本格的に餌を食べ始めました。

この冬は、暖かかったので、
冬の間も、少しずつですが、餌を与えていました。
ただ、青鷺よけのネットが邪魔。
仕方がないのですが、
青鷺はこの冬も度々やってきて、
2階の屋根にとまって、様子を伺っていましたので。

庭の鯉と共に、春を迎えつつある君子蘭、
廊下に取り込んでいた君子蘭に、
蕾が
20本以上つきました。
もうすぐ、開花、

我が家の本格的な、
春です。





2024年2月14日水曜日

2月14日 今年のエントランスの冬

今年のエントランスの冬、
例年に比べ、
寂しくなりました。
いつものようにクリスマスローズはそれなりに咲きました。


白いクリスマスローズに混じり、
薄紫の花も一株咲きました。
白のクリスマスローズの種から育った中の1つです。


結構賑やかに咲いている株もあり、
今年もそれなりにエントランスの冬を飾っています。

門にもいくつかの鉢を下げてみました。

ただ、残念なことに、
例年なら花がちらほら咲き始めるはずのノースポールは、
下の鉢のように、ようやく双葉から本葉がで始めた状況。

 いつもなら、かなり賑やかに咲いているはずの西洋桜草、
昨年は、
こぼれた苗から芽が出て、花をつけましたが、
今年は、ついに、秋の植木鉢に、
その芽生えを見つけることができませんでした。
猛暑の影響が、
西洋桜草の芽生えをだめにし、
ノースポールの育ちを遅らせてしまいました。
次年度の冬のエントランス、どのようにしたらよいか、悩みどこです。




2024年1月8日月曜日

1月8日 FT, ‘Chinese exports of machine tools to Russia surge’ を読んで

  Leahy, Joe, Chris Cook, Max Seddon & Max Harlow,

Ukraine conflict. Military components

Chinese exports of machine tools to Russia surge

                 FT, 3 Jan. 2024, p.2

 

を読んで 渡辺幸男

 

ウクライナ侵略によるロシア経済の非工業化の一層の進展についての

再確認

 

 2024年1月3日付のFTの2面に、ロシアの工業の非工業化に関心がある私にとって、大変興味深い記事が掲載された。この記事のメインタイトルは上にあるように「中国の工作機械のロシア向け輸出が急増」というもので、その上に「ウクライナ紛争、軍事用部品」とあり、記事の要約では「キーウの同盟国は、モスクワの防衛産業にとって重要な先進的な部材の供給増により警告される」とある。また、中見出しには「事実は、ロシアがヨーロッパからの機械輸入を遮断され、中国に依存するしかない、ということである」という発言が紹介されている。

 

 記事の内容について、私の関心に基づいて要約するならば、以下のようになる。

 ロシアの税関統計を利用し、ロシアへの中国製の重要な先進的工作機械の輸出が、ウクライナへの本格的侵略以来10倍に増えたことを指摘している。いまや、モスクワの兵器生産にとって決定的に重要な高精度のCNC装置の取引では、中国製の輸入が支配的な存在である。2022年2月には650万ドルであったCNC工作機械の中国製のロシア向け輸出が、税関の記録では、2023年7月には68百万ドルとなっている、とまずは紹介している。

 その上で、これは、ヨーロッパからの輸入が厳しく制限されたことで、ロシアは中国製のCNC輸入を選択せざるを得なかったことによる、とも指摘されているとしている。結果、中国製のCNC工作機械が、絶対額として増加しただけではなく、ロシアが輸入するCNC工作機械の輸入全体が急増する中で、中国製が12%から57%へと割合を急増している。また、絶対的には台湾製や韓国製の輸入も増えている。一方、侵略開始前に主要輸入元であったヨーロッパ製の輸入が占める比率が低下しただけではなく、絶対額でも顕著に低下している。

 他方で、ロシアの軍需工場での中国製CNC工作機械の使用は、まだ顕著に少ない様である、とも述べている。例えば、宣伝用の動画で撮られているロシアの軍需工場で使用されているCNC工作機械は、ほとんどが欧州製か台湾・韓国そして日本製である。これらの事実は、ロシアの軍需工場では、中国製のCNC工作機械が、精度や耐久性の面で日本製やドイツ製より劣るということで、信用されておらず、使用されていないことを示唆するとのロシア外のアナリストの見解が紹介されている。

 中国から輸入された中国製のCNC工作機械、それ自体は軍需工場で精密金属加工のために使われるために大量に輸入されたのではないようである。そうではなく、これまで輸入された欧州製等のCNC工作機械が軍需生産に集中され、それ以外の分野での金属加工の工作機械が不足しために、その穴埋めとして中国製が大量に輸入され、軍需生産以外の分野で使われている、ということを示唆する結論となっている。

 さらに本文には紹介がないが、掲載されたグラフをみれば、CNC工作機械についてのロシアの輸入金額の総額が、ウクライナ本格侵略前と比べ、月額4千万ドル強の水準から22年前半の月には月額2千万ドル台に減少したが、237月には月額1億2千万ドル前後へと侵略前の2〜3倍に増大していることがわかる。全体として、輸入金額が急増し、その中で、欧州からの輸入は絶対的に激減し、中国を中心とした台湾や韓国からの輸入が激増したということになる。

 

 以上、勝手に私が要約した記事内容である。記事そのものは新聞半ページ近くの大きさがあり、内容的に多くの論点に触れているが、私の関心に従えば、このようになると言える。

 

 ここから見えてくることは何か、次にこの点について考えてみたい。

 何よりも、ここで注目したいことは、ロシア国内では、高精度のCNC工作機械を生産することが出来ないだけではなく、精度が落ち、民需用の生産向けのCNC工作機械も、生産能力がほぼない、あるいは少なくとも、需要に応じて生産量を拡大することが出来ない、ということであろう。軍需用の高精度の精密金属製機器の生産用機械について、ロシア国内で生産することが出来ず、欧州製等の高精度の機械を輸入せざるを得ないのみならず、非軍需向けの精度の劣る工作機械を含めたCNC工作機械一般を増産できない、あるいは生産できない状況になっている、といえる。

 旧ソ連は、国際競争力は別として、当時の先端的な工作機械を自国内で生産し、旧ソ連圏内に供給していた。自給的生産体制をソ連圏として維持していたのである。だからこそ、米ソ対立の中で、自立的工業先進国として、高度な軍需製品を生産し、米国側に対抗していた。そのソ連が崩壊して30年余が経過した。その過程で、ロシアを中心とした旧ソ連の非工業化が進行した。ロシアは、原油やガスの輸出国への特化が進行し、先端的工業製品のみならず繊維製品等を含め工業製品を幅広くかつ数多く輸入するようになり、特に欧州から輸入するようになった。その欧州製の高精度の金属加工機械を使用して、ロシア製の先端的な武器の金属部分の加工・生産を行っている。このことが、ロシアの軍需産業の宣伝用の動画を通してみて取れるのである。

宣伝用動画ということであれば、通常、自国産の先端機械を使用した工場を登場させるものであろうが、そのような状況には全くないことから、欧州製そして日本や台湾製の先端工作機械を多用する兵器工場を紹介したのであろう。しかも、欧州からの工作機械の輸入が止まった中でも、依然として欧州製の機械を中心に兵器を製造している動画をアップしている。これは、自らの生産能力が、欧州からの直輸入が困難になっても、従来の水準を維持していることを強調したいがゆえであろうか。中国経由の欧州製工作機械の輸入も中国からの輸入に計上されている可能性もある税関統計であるが、この記事の図の注記によれば、利用している統計は税関統計だが、登録された原産国別に計上されているとしている。それゆえ、税関統計を利用しているが、この場合は生産国別の統計と言えそうである。

 

同時に注目すべきことは、金属部品加工の中核部分である工作機械に関して、従来の主要輸入元からの輸入が止まっても、自国製の工作機械生産へと最大努力を投入するという方向ではなく、他の多少精度等が劣る機械が輸入可能であれば、それの輸入に頼らざるを得ない先進兵器生産国が、現在のロシアということである。自立、ないしは自給可能な工業生産国から程遠い状況にあることを、この記事は示唆している。言い換えれば、従来の輸入元からの輸入が途絶しても、それを国内生産での代替とする方向での経済的、政治的力が十分には働かない、あるいは働かせられない、かつての先進工業国ということになる。他方で、中国製の「先進的」工作機械を豊富に輸入することは、今のロシアにとって可能だということになる。急ぎの増産のためには、自国内での基盤産業の再生を待っていられないし、待っていなくとも他の供給源が存在する、ということになる。

 

今回のウクライナ侵略による米欧等からの経済制裁により、先進工業製品の直接的な輸入が困難化したことが、ロシアに非工業からの脱出を可能とさせ、再先進工業化へと転進させる契機になる可能性の存在を考えていた私にとって、今回の記事は、その道への転進がほとんど進展していないこと、あるいは進展しそうにもないことを示唆する貴重なロシア工業状況の紹介となったと言える。旧ソ連時代から生産する能力がなかった先進半導体を依然として生産できないだけではなく、ロシア工業は、かつては生産していた(その当時の)先進的工作機械の国内生産も困難な「非工業国」となった、ということなのであろう。ロシアの再工業化の核となる先端半導体や先端工作機械を開発生産する能力を確保し、ロシア経済が再先進工業化を目指すような可能性が、全く示唆されないどころか、ほぼ否定されているようなFTの記事であった。

 

「先端的」中国工業製品の輸入が可能であり、欧州からの輸入が経済制裁で制約されても、それをすり抜けることが非工業化したロシア経済にとって可能である。そして、それがウクライナ侵略戦争の継続を可能とするロシアの自国での兵器生産を実現させている。同時に、長期的にはロシア経済の非工業化の徹底化、中国の先進工業化の進展という結果をもたらしている。このように見ることも可能なようである。

さらには、このような状況は、近い将来、ロシアは、先進工業化し巨大国内市場をもつ中国経済に対して、原油等の一次原料を豊富に供給することで経済成長を維持する、中国経済依存の周辺国になる可能性も示唆していると言えよう。中国経済にとってみれば、ロシアは国境を接した諸国の1つとして、他の旧ソ連構成の中央アジア諸国、カザフスタンのような国と同様に、世界最大の中国経済の工業生産を軸とした発展のための、有力な素原料供給国となる、というのがロシア経済の今後の展望であることを示唆するような記事とも言える。プーチン大統領の素原料輸出依存の経済成長政策、それによる国民経済の当面の発展確保は、ロシア経済にとって、長期的にはより一層の非工業化という、大きな代償を将来支払うことになると言えそうである。

 

 プーチン政権下で、欧州への素原料供給・工業製品輸入国としての豊かさ追求の一定の実現が、ウクライナ侵略の開始とその長期化により、自立的工業国へと再転換するのではなく、素原料供給・工業製品輸入国としてはそのままで中国へのそれに転換し、中国の周辺国として新たな発展展望を模索せざるを得ないことになる。これが、ウクライナ侵略が長期的にはロシア工業にとって意味することのようであり、その可能性を示唆する記事といえよう。

ロシアは、国民生活水準の向上を、この転換を通して維持していけるのであろうか。あるいは、ロシア国民は、ヨーロッパ製ではなく、中国製、そしてインド製やトルコ製の消費財の輸入で満足するのであろうか。

ウクライナ侵略が長期化し、長引けば長引くほど、これらの点についての懸念は強まることになる。モスクワでスターバックスが撤退し、もじりのスターズ・コーヒーが生まれた話どころの問題ではない。


やはり、プーチン大統領にとって、キーウ進軍の形でのウクライナ侵略開始は、短期で傀儡政権樹立のための侵略であり、ハンガリー動乱やプラハの春の旧ソ連軍侵攻による鎮圧の再現を夢想していた、ということであろう。旧ソ連の中のウクライナなのだから、ロシア人の多いウクライナなのだから、と、ロシア軍の侵攻で一挙に傀儡政権の樹立が可能だと、夢見ていたのであろう。その代償は、極めてロシア経済にとっても大きなものとなる。

2024年1月2日火曜日

1月2日 新年のご挨拶

 甲辰1月2日

新年のご挨拶 謹賀新年

渡辺幸男

 

 毎年、元旦に新年のご挨拶をアップしていたのですが、今年は、書き忘れ、2日を迎えてしまいました。遅ればせながら、新年のご挨拶をしたいと思います。

 

 昨年は、私にとっては75歳となり、後期高齢者となった節目の年でした。体力的な問題もあり、長年、多分20年余だと思いますが、携わってきた季節労働、中小企業研究奨励賞の審査委員を、2023年3月をもって退任しました。1998年に中小企業研究奨励賞特賞を受賞し、その頃に審査委員を務められていた故佐藤芳雄教授が亡くなられ、佐藤教授の弟弟子ということもあったのではないかと思いますが、同世代の中でも早くに中小企業研究奨励賞の審査委員を拝任することとなりました。

 それから20年余、年末は、いつも中小企業研究書を何冊も読むというのが務めとなり、特に経済部門の主査をおおせつかってからは、専門委員の方々とともに10冊ほどの専門書を1ヶ月の期間で読み、その評価を自分なりに行うことになりました。当初は、中小企業懸賞論文の審査委員も行っていたこともあり、懸賞論文への応募作品で1次審査を通った企業部門の論文も読む作業も行い、大学教員としての年末の業務遂行と並行に作業を行うことになりました。

 まだ、五十代で今から比べれば若く体力と気力もあったのですが、両方の審査を同時に行うこと、それも責任者として行うことは大変きつく、懸賞論文の審査員については辞退し、奨励賞の経済部門主査のみということにしてもらうという、勝手な希望を両賞の主催者である商工総合研究所にお願いし、通してもらいました。その研究奨励賞の審査だけでも大変きつくなり、遂に、昨年3月、2022年度の審査と授賞式の終了をもって退任させていただきました。

 研究奨励賞の審査委員であることで、毎年の主要な中小企業関係の著作、かなり中小企業研究としては周辺的分野を含めた多様な研究成果について、本格的な研究と言える著作の主なものを、毎年10冊読むということは、自分の研究に幅を持たせる意味でも、大変意味のあるものでした。中小企業研究の中でも、自分が得意の研究分野に閉じこもることが多くなりがちになっていたのですが、この経済部門の主査を続けることで、強制的に研究書を読まされることになり、結果的に狭い殻に閉じ困らずに済んだかと思います。

 

 そして、昨年の暮れ、研究奨励賞の10冊を読む義務が無い年末、全く新しい暮れでした。本来なら、季節労働がなくなったのであるから、新年の挨拶、このブログでの挨拶はとっくにかけているはずなのですが、どういうわけか、元旦までに用意することができませんでした。

 体力的に落ちてきていることは確かなのですが、パソコンに向かい文書を書くことができないほどではありません。が、気が抜けていたのか、気がついたら1月2日になっていました。

 今の日常は、大学教員である間は、私なりに中小企業研究者として、中小企業研究関連の著作を中心に読書すること、本を読むのは大好きなのですが、他の分野の本については禁欲すること、面白くなってしまうと、その関連の本にのめり込んでしまうので、他分野の面白い本を読み漁ることは禁欲、ということにしてきました。

その禁欲から解き放されました。結果、色々な分野の研究に関わる著作を読むこと、私の場合は、近世のアジア経済史から始め、中南米のスペイン征服以前の歴史、人類の生成をめぐる歴史、地球生物の創生史といった分野の本を読むこととなりました。これらの分野での研究は、今世紀に転換する前後から、新たな展開を遂げ、日本の研究者もその一翼を担い、その成果が、今、数多く、数多くの分野で出てきています。1960年代までのこれらの分野についての読書による常識に縛られていた私にとっては、大変新鮮な分野です。

 本格的な研究につなげるのではなく、入門書とその元となった研究書を、好きな形で読み漁る、これが楽しくてしょうがないのです。これを行うことで、この1年、特に年末については、昨年までと大きく異なる形で過ごしてきました。その中で、新年の挨拶を元旦までの準備することを、つい忘れてしまったのです。

 

 今年も、昨年同様に、好きな本を乱読し、庭いじりをし、それなりに元気に過ごしたいと思っています。相変わらずの出不精で、なかなか多摩川を渡ることない1年に、またなることと思いますが。ただ、メール等でのやり取りは、積極的に行いたいと思っています。完全な引きこもりではなく、窓口をそれなりにあけ、交流をしながら、好きな本を読み、花々をいじり、出不精を貫徹するのではないかと思っています。

 

 本年もよろしくお願いします。

 

 

2023年12月28日木曜日

12月28日 冬至を過ぎ健在、露地のサルビア

 冬至を過ぎ、本格的な冬到来、
のはずですが、
我が家のエントランスのサルビア、健在です。
門の脇に置いていたのを、
軒下の方に移動しましたが。
我が家のある二宮町百合が丘にも、すでに初霜は到来し、
お向かいの家の屋根は霜で既に何回も白くなりましたが、
エントランスの露地植えのプランタのサルビア、
大きなプランタに植えたため、冬囲いをしたテラスに入れられず、
エントランスの軒下に移動しただけですが、
今日、12月28日まで元気。


いつまで元気?
この分だと、正月を無事迎えるのではないかと期待しています。
正月の松飾と同居する露地で咲き誇るサルビア、
なかなかのものだと思います。



2023年11月24日金曜日

11月24日 松里公孝著『ウクライナ動乱』を読んで

 松里公孝著『ウクライナ動乱 −ソ連解体から露ウ戦争まで』

(ちくま新書、2023年)を読んで、感じたこと、

          旧ソ連の「非工業化」への示唆

渡辺幸男

目次

はじめに

第1章      ソ連末期から継続する社会変動

 1 非工業化

 2 分離紛争

 3 安全保障

第2章      ユーロマイダン革命とその後

  1 ユーロマイダン革命の見方

  2 ウクライナ内政の地政学化

  3 ユーマイダン革命

  4 失敗した沈静化の試み

  5 ユーロマイダン後のウクライナ政治

第3章      「クリミアの春」とその後

  1 2009年以前のクリミア

  2 マケドニア人支配下のクリミア(20092014年)

  3 ユーロマイダン革命とクリミア

  4 ロシア支配下のクリミア(20142022年)

第4章      ドンバス戦争

  1 ドネツク州の起源

  2 ソ連解体後のドネツク・エリートの苦闘

  3 オレンジ革命と地域党恩顧体制の完成

  4 ユーロマイダン革命とドンバス革命

  5 平和でも戦争でもなく

第5章      ドネツク人民共和国

  1 先行する分離運動

  2 建国期の試練

  3 20148月のドネツク(リアルタイム)

  4 小康期の人民共和国(20152017年)

  5 活動家群像

  6 経済封鎖以後(20182022年)

第6章  ミンスク合意から露ウ戦争へ

  1 分離紛争解決の五つの処方箋

  2 ゼレンスキー政権の再征服政策

  3 奇妙な宣戦布告

  4 体制変更戦争

  5 領土獲得戦争へ

終章  ウクライナ国家の統一と分裂

あとがき

 

 ドンバス地方、ウクライナ東部地方の工業地帯、旧ソ連時代に炭鉱を軸に鉄鋼業等が栄えた工業地帯であり、ソ連解体後、旧ソ連時代の経済水準まで回復することができずにいるウクライナの中でも、特にその点が顕著な地域だそうである。このドンバスとクリミアとを中心に、ソ連解体以後の状況を著者自ら現地取材を行い、丁寧に追いかけている。そのことを踏まえ、クリミアとドンバスとが、キエフ中央政府の政変に従わず、独自の地域自立化への道を歩もうとし、それが中央政府との武力衝突となったと理解している。この問題はミンスク合意で一旦ある意味で沈静化したが、その合意は本来的な意味での解決ではなく、ウクライナ中央政府の側からの攻撃で、再度本格的な内乱となったと述べられている。

 これまであまり我々に知られてこなかった、ウクライナのドンバスやクリミアの反乱側の人々の状況と動きを丁寧に追いかけ、それがロシア政府の働きかけによるというよりも、自立的な反中央政府の連邦化を目指した動きであることを明らかにしている著作である。この点については、当初、多少の違和感を覚えながら読み始めたが、読み進むうちに、一定の説得性を感じ始め、その論理の妥当性を理解し、興味深い著作と感じた。

しかし、同時に、そのような自生的、自立的な連邦化への動きを破壊したのが、ウクライナ中央政府であるとともに、何よりも、ロシアのプーチン大統領であることも、この著作の展開を通して強く感じた。クリミア併合を実現し、ドンバスの反中央政府勢力を支援したプーチン大統領は、2022年に一挙にウクライナ中央政府そのものの転覆、傀儡政権化を狙い、侵略を開始した。しかも、中央政府転覆が失敗したことで、ドンバスの反乱の位置付けが大きく変わった。このことで、ドンバスでの反乱が、ドンバス等のウクライナ東部と南部諸州を占領し、ウクライナ領土の多くを、クリミアに続くロシアによる占領と自己支配下への一方的編入のための戦争となった。

このような経過そのものは、本書を通して再確認できた。しかし、違和感を覚えたのは、プーチンの介入侵略が、他の旧ソ連諸国でのように非承認国の分離・樹立ではなく、ウクライナ政府の転覆、そしてその後のロシア併合となったこと、この事象の位置付けである。ドンバスの連邦化での自立化の動きは、その歴史的位置からの説明で、理解可能であるが、それをロシアが併合すること、これをどう位置付けるか、その点で本書の流れに違和感を感じた。

同時に、本書もそうであるのだが、旧ソ連時代に相対的に豊かな生活を実現した旧ソ連の工業地帯としてのドンバスであるが、それがソ連解体後に、どのような国際競争下での位置にあり、それがその地域の経済停滞にどうつながったのか、その分析はほとんど存在しない。この点について特に不満に感じられた。

炭坑から始まる垂直統合型の鉄鋼業が中心の産業地帯と述べられ、そこでの投資がソ連解体後十分でないことで、国際競争力で遅れをとったとの指摘はあるが、本当に投資量だけの問題なのであろうか。そうではなく、産業組織の在り方と国際競争との関係の問題ではないのか、このような疑問が生じるが、この点は全く議論されていない。旧ソ連のロシア内の工業地帯を見れば、当然、このような疑問が生じると思われるのであるが。

すなわち、ロシア全体での旧ソ連以来の工業の解体、私流に言えば「非工業化」と同様な経緯で、ドンバスの工業も衰退の道を歩んでいたのではないかと、私は思わずにはいられない。そのことをドンバスの住民は理解できず、ウクライナ政府の政策の結果の問題であり、ロシアと接近できれば、旧ソ連時代の相対的な繁栄を再現できると誤解しているのではないかと、感じられてならない。いずれにしても、この点に関連して不可欠な論点といえる工業地帯としてのドンバスの可能性と問題点についての分析は、本書には全く見られない。近年見る旧ソ連とロシア研究での物足りない第一の点が、ここにも存在している。旧ソ連工業の解体との関連で、旧工業地帯ドンバスの経済停滞を分析しないことにより、客観的な状況の把握に問題が生じていると言えよう。

旧ソ連の工業は、旧ソ連勢力圏内のみでのみ、その範囲内では(国際)競争力は存在していたのであるが、西側の諸資本等との競争に耐えうる競争力(工業生産性?)を保持していなかった、グローバルに見れば、非競争的先進工業であった。このような旧ソ連の工業企業が、中国のように独自の海外からの競争にさらされない巨大な低価格工業製品市場の形成を市場経済化の過程で実現できず、正面から西側工業と自国市場を巡り市場競争を行うこととなった。国際的な競争的環境の中で育ち生き残ってきた西側工業企業との競争は、旧ソ連工業企業にとって敗退以外の選択肢がないことになる。一部の軍事生産のようにロシア政府等の保護下で生き残ったり、天然資源の賦存状況に恵まれて生き残ったものもあるが、正面から国際市場での競争にさらされた工業分野は、ほぼ壊滅、というのが旧ソ連そしてロシアの「非工業化」である。ドンバス工業も例外ではないと思われる。

 しかも、ロシアもそうだが、ウクライナも工業以外の分野に巨大な輸出産業を保持している。今回のロシア侵略下で問題になっている小麦等の穀物輸出の停滞とその国際市場への影響は、まさにこのウクライナの一次産品での強大な供給能力と国際競争力状況を反映していると言えよう。そのため、旧ソ連下に形成された工業地帯の本格的な国際競争力達成、それによる対外バランスの再構築を目指さなくとも、あるいは目指せなくとも、とりあえず、国民経済としての最低限のバランスは確保可能となると思われる。結果、旧ソ連下の工業地帯は、一層ソ連解体による市場喪失という被害を被り、工業生産活動そして経済活動が停滞縮小した地域となる。

旧ソ連経済下では旧ソ連経済圏内での有数の工業生産地域であったドンバス、それだからこそ、ソ連解体下における西側の工業資本との競争激化と競争での敗退の影響は、一層甚大なものとなる。しかも、このような状況についての情報が不足している地元の人々、旧ソ連経済下でウクライナ内での相対的な繁栄地域としての生活を享受した工業地帯の人々にとっては、自らの地域の経済的停滞についての状況認識、自覚が困難となり、さらには停滞の意味についての理解は一層困難になる。その結果、ロシアの工業地帯との連携が、旧ソ連経済下のように再現すれば、繁栄が蘇るかの如く誤解することになる。旧ソ連の工業活動状況を見れば、これが幻想であることは一目瞭然だが、希望的観測のもとでは、誤解の解消は困難といえよう。ウクライナの旧工業地帯ドンバス地方の人々の状況を、このように理解することは可能であろう。

それゆえにこその地域としての自立化志向とロシア工業地帯との再結合への期待ということとなろう。そこにプーチンの付け入る隙が生じたのであろう。プーチンのロシアの経済的成功、国民生活水準の回復上昇と見えるものの元は、ロシア内工業の壊滅状況を自国産の原油や天然ガスの開発採掘輸出によりカバーし、西側諸国からの工業製品輸入に依存する、一次産品輸出国としての成功を基にした、一定の国民生活水準の上昇に過ぎないのだが。

 

このように考えてくると、ウクライナ問題をドンバス地方の置かれた状況から考えるためには、旧ソ連圏内工業に共通するソ連解体が、経済活動、この場合は工業生産活動にあたえた経済的影響についての分析が不可欠となろう。しかし、残念ながら、この研究でも、その点の分析は皆無といえる。ソ連解体後の旧ソ連の工業の置かれた状況、国際競争状況とその結果の内容・意味の解明・確認こそが、今のウクライナそしてドンバス地方の可能性を考える意味でも、不可欠な研究課題だと思えるのだが。単なる統計的状況についての報告ではなく、工業を中心とした実態研究を踏まえたような実証的な産業分析は、今の旧ソ連経済圏については、少なくとも日本語文献では、ほぼ伝えられていない。断片的な研究成果を見る限り、このブログに掲載したいくつかの論考で再三言及してきたように、旧ソ連の流れを引く工業は、壊滅状況にあるようだが。

ダイナミックに発展する工業活動について、その発展の内容についての実態調査的研究は、それなりに取りつきやすいし、その状況を生で見ることも研究者に許されることが多い。しかし、解体し衰退しつつある経済活動を、現場にまで行って調査研究することは、多くの場合、当事者と政策担当者の拒絶反応にあい、大変難しいことは理解している。しかし、今のウクライナやロシアの経済を考え、今後の経済状況を展望する上には、一次産品を中心とした経済活動のみではなく、工業生産活動の実態、その問題点を解明することが不可欠と思われるのだが。

 

 ここまで書いてから、この文章をブログにアップすることを考え始め、ブログの最初に、松里氏の著作の目次を書き始めた。そこで改めて、本書の第1章の1が、「非工業化」というタイトルであることを見出し、何故、上述のような理解に至ったのか、自らの思考への疑問を感じた。そのため、改めて当該部分を読み直すことにした。自らが「非工業化」という言葉を使って批判しながら、それに応える可能性のあるタイトルの節が、第1章の出だしに存在していることに、改めて気がついたのである。

 

松里氏によれば、1990年代初めのソ連解体により、旧ソ連国、特にロシアやウクライナの旧ソ連時代の工業地帯の「非工業化」が進展した、ということである。しかし、その理由は具体的に触れられず、たとえば、2017年のウクライナのクラマトルスク重機械工場での見学時の話として、アゾフ海での風力発電にドイツ系の企業が投資しているが、ポーランドに風力発電機を作らせ、アゾフ海に近接するウクライナのクラマトルスク重機械工場には、「技術を要さず付加価値の低いものを作らせ」ている、とし、当該工場の「技術者にとっては屈辱的な分業」と述べ、工場の敷地の中央に、風力発電機がどんと置いてあるが、それは技術者たちが「「私たちは簡単に作れる」ということをドイツ人に示威」(p.2930)するためのものだと紹介している。

しかし、議論はそこで終わり、何故、設置場所近くで「作れる」工場があるのに、ドイツの投資家が、わざわざポーランドで作らせているのかの理由の分析どころか指摘さえ全くない。松里氏には当然なことなのかもしれないが。

旧ソ連の重工業企業の後身工場にとってものを作れることと、その工場が国際市場向けに経済的に競争力ある水準で作れることとは、全く別のことであるはずだが、両者が依然としてウクライナの国有企業の流れを汲む企業の工場担当者に混同されていることを、この紹介は如実に示している。このような意識こそ、その工場の国際競争力に関する大きな問題につながるはずなのだが、そのような指摘は全くないまま、話はそこで終わっている。それゆえ、なぜ、このような市場競争についての観念のないであろうこの企業が、2017年まで生き残れているのか、この点についての議論どころか指摘ももちろん全くない。

旧ソ連の重化学工業、いや製造業全体は、閉ざされた市場条件、旧ソ連経済圏内だけで通用する経済的競争力、生産できれば需要はついてくる状況での競争力しか持っていなかった。本格的な国際競争力とは無関係に、物的な生産能力それ自体だけで、製造業企業が再生産可能であり、仕事は回ってくる、といった発想である。その端的な表現として、2017年段階でも、ウクライナのクラマトルスク重機械工場の技術者の上記の発言を見ることができよう。このような企業が依然として存立していることこそ、市場経済化したウクライナ重工業の最大の問題性であり、中国の市場経済化のもとで簇生した民間工業企業と大きく異なる点である。

私が見てきた、中国計画経済下で自転車市場を寡占的に支配していた国有企業の1つである天津の飛鴿自行車の2000年代における姿を、まさに思いだすものである。ただし、中国自転車産業では、天津の国有企業である飛鴿は1990年代半ばに急激に衰退したが、そこからの技術者等を利用した新興私営企業が簇生、発展し、世界市場を寡占支配する中国自転車産業企業を生み出してはいるのであるが。

旧ソ連工業の「非工業化」という認識は、松里氏と私の間に共有されているが、その寄ってきたる所以の理解については、かなり異なっているのではないかとも想像される。しかし、残念ながら、松里氏のこの文献には、ロシアやウクライナの旧ソ連圏で「非工業化」をもたらしている理由、そして同じ計画経済下にあったにもかかわらず、中国については改革開放後「非工業化」せず、中国が西側諸国による経済制裁下でのロシアへの工業製品の重要な供給源となっていること、これを理解するための手がかりとしての指摘さえ一つとしてないと言える。

物を作れるということと、市場経済下で売れる物を作れるということは、根本的に異なることなのである。本書で紹介されている風力発電機だけではなく。ここにこそ、旧ソ連特にロシアやウクライナでの「非工業化」の根源があると、私は考える。もし、この点を象徴的に表現するために、クラマトルスク重機械工場が作った風力発電機に言及したのであれば、松里氏への私の誤解であると言えるが。いずれにしても、何故売れないのか、についての指摘がないので、このようなことをしつこく述べた次第である。

松里氏が繰り返しウクライナに実際に入り、聞き取り調査を行い、それを紹介してくださっていることは、大変貴重なことと言える。それだからこそ、そこから、旧ソ連のウクライナ国有大企業のスタッフの意識が具体的に見え、国際競争力を意識しないかのような姿も見えてきた。また、彼らのものづくりに対する認識、これを感じることができたのであるから、貴重な報告だと言える。同時に、これらの紹介は、私の旧ソ連工業の「非工業化」議論について、改めて裏付けを行ったとも言える。ソ連解体が生じ、西側の市場と一体化してから30年近くが経過した2017年でも、国有企業の技術者の感覚は、大きく変化しておらず、「作れる」ことと「売れる物を作れる」こととの混同が依然として存在しているようである。同時に、中国の飛鴿のような国有企業と異なり、ウクライナの国有企業は巨大企業として存立維持することが依然として可能であった、という事実も確認された。これらのことの持つ旧ソ連工業の問題性は大きなものであるといえる。

中国の国有企業のうち、国家によって市場独占を保証されず市場経済にさらされている部分は、大きく国有企業自体が換骨奪胎し本格的な営利企業へと転換するか、企業自体は崩壊し民営企業への人材移転が生じ、産業分野としては競争的な企業分野へと大きく転換した。しかし、旧ソ連では、それが生じずに消滅した部分と、転換しないにもかかわらず何らかの理由で生かされてきたクラマトルスク重機械工場のような企業とに分かれ、自国系企業による工業部門の国際競争力形成は、生じにくかった、ということを示唆していると言えよう。これこそ「非工業化」である。それでは、なぜ、そのような状況は生じたのであろうか。多くが撤退し、生き残っている企業も工業企業としての国際競争力を入手することなく、生き残れている、という状況は。これについての示唆は、本書には全くない。

第1章の1での「非工業化」とは、状況について事例を通しての紹介であり、その事例そのものは大変示唆的だが、それ以上の議論はない。残念である。

それゆえ、目次をこのブログに書く前に述べてきた議論について、改めて第1章の1「非工業」の節を読み直しても、読み直す以前に書いた文章を変更する必要性を感じなかった。