冬をテラスの中で無事越したサルビアの苗、
元気に花をつけています。
少し密に植えすぎた感があるのですが、
賑やかさはなかなかなものです。
軒下で冬を越したゼラニウム、
かなり痛みましたが、
残った枝から多くの花が元気に咲きました。
私の花を育てる気合いが落ちてきたため、
冬を越す鉢がかなり減りましたが、
初夏を迎え、それなりに咲き始めました。
いつものように、エントランスが賑やかになりました。
我が家の花と、私が時々書いている小論 投稿者プロフィール 慶應義塾大学名誉教授 専門 中小企業論・工業経済論・産業集積論
冬をテラスの中で無事越したサルビアの苗、
元気に花をつけています。
少し密に植えすぎた感があるのですが、
賑やかさはなかなかなものです。
軒下で冬を越したゼラニウム、
かなり痛みましたが、
残った枝から多くの花が元気に咲きました。
私の花を育てる気合いが落ちてきたため、
冬を越す鉢がかなり減りましたが、
初夏を迎え、それなりに咲き始めました。
いつものように、エントランスが賑やかになりました。
FT, Inagaki, K. & E. White, ‘BIG READ. AUTO INDUSTRY’,
(22 May 2026, p.15) を読んで
渡辺幸男
本特集記事は、中国の自動車産業の動向を伝え、分析する、稲垣氏等による最新の特集記事である。本特集の見出しは、「メイドイン中国の欧州車群」であり、「西側の自動車メーカー群は、彼らの自国マーケットに、中国の過剰な生産能力を利用し、低コストの車両を輸出しているが、同時に海外の技術に依存しすぎとなることを恐れている」である。
昨年も、本ブログで、同じ稲垣氏らによって書かれた特集記事を何回か紹介してきた。いずれの特集記事も、中国に進出した欧州系乗用車メーカーを巡る状況の紹介とその意味の分析であった。昨年11月の記事は、ドイツのVWをめぐる記事で、ドイツ国内生産拠点の縮小と、開発を含めた中国での生産強化が、ドイツのVWによって実行されようとしているという、衝撃的な特集であった。今回は、中国で生産する、外資系や中国系のより多くの乗用車メーカーを対象に、ほぼ同様な議論が展開されている。
ごく単純にまとめれば、中国系メーカーが、中国内での過剰生産と激しい競争を前に、より利益の出る海外市場、それも欧州市場等の先進工業国市場へと進出し、その結果、中国が世界最大の乗用車輸出国となった、という形で、中国系企業も含めて議論がまとめられている。
そこで紹介されているグラフ、「中国乗用車輸出の爆発」と題された2つないし3つのグラフが大変興味深い。1つは、2021年から2025年にかけての5年間の乗用車輸出台数と同輸出金額の推移を示したグラフである。5年間で200万台から700万台へと台数で約3.5倍、金額で見ると、2百億ドル余程度から11百億ドル程度へと5倍程度の急拡大となっている。
残りの2つのグラフは、2020年と2025年それぞれのトップテンの企業の外資系を含む中国の自動車輸出企業の順位とそれらの輸出台数を示したグラフである。ここで興味深いのは5年間で、第1位の輸出企業の輸出台数が、30万台程度から130万台程度と急増していることと、首位の企業が上海汽車から奇瑞汽車へと入れ替わっていること、さらに2020年には圏外であった比亜迪が2位、100万台を輸出しているということである。なお、上海汽車は2025年でも3位にとどまり、50万台を輸出し5年間で20万台程度輸出を拡大しているが、その拡大が見えにくくなるほど、他の2社の拡大は大きい。さらに注目されることは、全体が急拡大している中で、上位10社のうち5社まで5年間で入れ替わっていることである。
半端ではない輸出拡大を実現し、かつ、その主要な担い手は、各社が拡大する中でも、その順位や表記企業が、5年程度の期間で、大きく入れ替わっている。これが今の中国の自動車産業、否、中国の工業全般の状況を端的に表現していると、私には思われる。
同時に、ここで注目されることは、乗用車産業について言えば、海外輸出拡大は、国内生産過剰ゆえの、原価を切った、あるいはそれスレスレの輸出の拡大、すなわちダンピング輸出とは、全く言えなそうもないということである。この記事の中で触れられているのは、海外輸出の方が採算的に合うので、奇瑞汽車は積極的に輸出を拡大しているということである。高度成長期の日本の鉄鋼業に一時期見られたような、国内市場向けの生産過剰下での、過剰製品分の採算を度外視しての輸出と同様なものとは、いえそうもないのである。海外が国内より儲かるから、海外市場を急拡大させている。こう言えるのだという。
巨大な市場に育った中国国内市場を前提に、垂直社会的分業下での国内での諸企業による部材からの一貫した生産の拡大と、EV生産をめぐり多様な分野・側面での技術革新が生じ、これにより、実質的な生産コストが、製品の品質向上を伴いながら下落し、国内需要すなわち市場を一層広げている。しかし、国内市場では競合メーカーが多く、競争が激しく、巨大市場が依然として拡大していながら、寡占的市場支配を実現できず、価格競争も激しく、あまり儲からない。他方で、国内生産体系での技術革新と規模の経済性の実現とを活用すれば、海外市場で強い競争力を発揮することは可能であり、それを前提に、輸出が急拡大しているのが、今の中国の乗用車産業、ということになる。
国際競争力を巨大国内市場の存在を前提としての技術革新を通して実現したが、資本の集中が進まないため、その利益は製品価格の低下と国内市場の拡大へと反映するだけで、企業利益の大幅増にはならない。それに対して、海外市場は、中国のEVメーカーから見たら旧態依然とした内燃機関中心の技術革新の進展が遅い寡占的市場である。そこに輸出や直接投資で進出すれば、高い収益性を実現できる、こんな展望が見えてくる。それを着々と、一部の企業は実現し始めている、というのが、このグラフに表現されていることであろう。
また、この記事に書かれていることは、このような中国企業の状況下で、その輸出拡大にさらされている欧州市場、欧州市場の既存企業、同時にこれらの企業はかつて中国市場の形成過程で直接投資を中国に行った企業であった。それらがVWをはじめとして、中国市場の拡大とその技術的先進化の下で、どのように生き残るか模索している姿を紹介したものでもあるといえる。
私が初めて中国の現地調査を経験したのは、2000年であった。それから四半世紀余、中国工業の位置は、激しい競争下での、その先進技術化と、巨大な国内市場ゆえに、独自に発展し、かつて米国市場が占めていた位置を、中国市場も占めるようになり、世界の工業の主役の1つである乗用車の製品・生産技術の発展をもリードし始めたとも言えそうである。そして、その道は、かつての日系企業のように米国市場依存へと傾斜することなく、巨大国内市場の開拓を前提にした上で、グローバル化を実現しそうに見える。
時代は変わった、と改めて感じた次第である。
EV化促進を拒否した米トランプ政権下での米国乗用車工業、そして米国市場に専ら依存する日系乗用車メーカー、これらのかつての覇者企業群は、これからの世界市場でどういう位置付けに置かれるのであろうか。これは乗用車産業だけの問題ではないが。FTでは、乗用車メーカーについては、専ら欧州系メーカーが取り上げられ、米系メーカーや日系メーカーについての分析は少ないようであるが。
さらには、内燃機関の乗用車産業さえ維持し得ていない旧ソ連を引き継ぐロシア工業とその市場、欧州ほどの市場としての魅力も中国系乗用車メーカーにとってはないのかもしれない。欧州市場の周辺市場として位置付けられて、中国系メーカーの進出の対象となるようにも思われる。
FT記事、
「ロシアのミサイルに西側製の部品が見出された」を読んで
Miller, C., C.Cook, & N.Sedoon,
‘Ukraine war Western parts found in Russian missiles’
FT, 16 May 2026, p.2
渡辺幸男
副見出しは、「部品は重要な軍事用部材についての輸出規制が始まって長くたってから製造されたもの」と言う指摘と、「「それぞれのミサイルが100以上の西側で作られた(部品)を含んでいる」というVlasiuk氏(ウクライナの輸出規制関連係官のトップ)の発言」からなっている。
内容は、見出しに見られるように、この木曜日に、ウクライナに多数打ち込まれたロシア製のミサイルの残骸からわかったことは、半導体チップ等の主要部品に、依然として西側諸国製の部材が100以上使われていると言うこと、そしてそれがTIやAMDといったメーカーの2024年や2025年製のシリアルナンバーがついたものであったということである。すなわち、西側諸国の制裁によって規制されている部材が、ウクライナに現在打ち込まれているロシアのミサイルに依然として使われていることの確認である。
ロシアは現在ウクライナ侵略のために多数のミサイルを生産しているが、それらの生産のために、米国により輸出規制がなされている多くの部材を第3国経由で手に入れることができているし、また、中国製のクローン部品に置き換えたりもされているということが指摘されている。
すなわち、西側の制裁により厳しく輸出規制がされているが、第3国経由での入手や中国製への置き換えで、依然として主要部品を輸入に依存しながらも、ロシアは、自国製の巡航ミサイルの量産体制を維持し、それをウクライナ侵略に使用している、というのが、この記事の内容と言える。
この記事が確認し、経済制裁との関連で主張していること、それ自体が興味深いといえる。が、私としては、その上で、工業経済、工業発展の元研究者としての私としては、いつもの疑問、そしてそのことの持つロシア経済にとって、長期的な意味の重要性を、その事実を通して改めて感じてしまう。
すなわち、ウクライナ本格侵略開始から4年余が経ち、すなわち、西側の最新軍需製品の主要部材についての対ロシア輸出規制が本格化してから4年が経過しながら、主要軍需製品である巡航ミサイルの主要部材について、依然として西側の部材の間接輸入と中国製クローンの輸入に大きく依存しているし、依存できている、否、依存せざるを得ないでいる、ロシアの軍需産業の状況をどう考えたら良いのか、ということである。すなわち、ロシア工業の現状の産業としての自立性のなさが、改めて確認されたことの持つ意味である。
なぜ、ロシア工業は、旧ソ連のそれなりに先進的であった工業、特に兵器産業の当時の先端的な主要生産機能を引き継いでいながら、主要部材について、間接輸入に依存し、中国製のクローンにさえ依存せざるを得ないのはなぜなのか。豊かな天然資源輸出による資金と旧ソ連から引き継いだ軍需産業をもとに、特に巡航ミサイル等のトータルな部材からの生産技術をもとに、軍需用先端部材についてのロシア内生産化を、何故、実現できないのであろうか、という疑問である。
これが、可能であれば、高い金を払って既製品の第3国からの輸入をしないで済むし、中国に依存しないで自律・自立的な軍需産業を構築できるはずである。旧ソ連からの、当時は先進的であった基礎的な軍事製品生産技術の継承を前提にすれば、素人考えでは、4年という年限は十分とは言えないとしても、それなりに開発を実現することができる年限ではないか、と思われる。兵器産業の人材は元々存在したはずだし、天然資源の輸出により資金もかなり豊富に存在し、需要そのものは引く手数多に存在するのであるから、ロシア国内で、この記事で取り上げられているようなチップ部品を、少なくとも軍需用に特化したものであれば、需要は豊富にあるのであるから、国内量産化を実現できるのではないか。そう考えるのである。
しかし、実態は、この記事にあるように、依然として西側頼りから抜け出られず、多少なりとも、当初から代替したのは、兵器産業では旧ソ連の技術を引き継いだ後発工業国のはずの中国メーカーの生産に依存することによってである、というのである。これをどう見るべきであろうか。
プーチン政権は、ロシアの工業の改めての先進工業化に向けての政策を放棄したのであろうか。私が、かねて主張しているように、ロシア経済の非工業化が、プーチン政権下、そしてウクライナ侵略戦争下で、一層進行したのであろうか。プーチンの意図としては、先端工業化政策を放棄してはいないのであろう。しかし、ウクライナ戦争遂行のための軍事費を維持し、侵略戦争を国民に受け入れさせるために、ロシア国民の生活水準のある程度の向上の実現との両立を実現させざるを得ない。このような政策をとったことの必然的結果として、少なくとも当面は、先進工業化実現を目指しての大量資金投入を諦めざるを得ない、ということなのであろう。
豊富な原油等の第一次産品の生産、輸出による豊かな外貨収入を前提にしても、長期化している軍事費拡大と、国民生活のそれなりの向上の実現とで、手一杯であり、本格的な先進工業化へ向けての投資を行うことはできないでいる。それが現状なのであろう。ただ、大量の資金を投入したところで、競争的主体が多数生まれるようなことがないような、今のロシアの生産システムでは、台湾や中国に対抗できるような先端工業化推進を実現できるとは、私には思えないが。
ウクライナ侵略のロシア経済、ロシア工業にとって持つ長期的な意味、これは、極めて重大であることを、この最近のロシア製巡航ミサイルの構成部品が物語っているとも言える。ウクライナ侵略のために今最も必要な最新型の巡航ミサイルの先端技術を担った主要部品でさえ、依然として西側製か中国製を多く含むのである。ロシア化、国産化の進行は実現していないことを、如実に示す記事となっている。
西側のロシアに対する先端工業部材の輸出禁止という制裁措置は、第3国経由で回避されるか中国製で代替され、巡航ミサイルの生産をロシアは維持できている。できているから、戦争を続行できている。しかし、そのことは、同時に、ロシア国内生産の部材のみでは先進的巡航ミサイルさえ作れない、今のロシア工業の水準を示唆している。そして、ウクライナ戦争勝利のために国内生産化が最も求められる先端的兵器でさえ、部材を含めた国産化には程遠い。こんなロシア工業の現状が露呈している記事である。中国製の部材に依存する、依存せざるをえないことはあっても、国内産の部材にもっぱら依存して巡航ミサイルを製造することはできないのである。
プーチンの下でのロシアの非工業化の進行、一次産品輸出国への道の結果的追求は、留まるところを知らない、といったところであろう。こんなロシア非工業化の再確認に近い感想を、私に持たらしたのが、この記事である。
我が家の春を、
妻が活けました。
咲き初めの君子蘭と、実をつけ始めたクリスマスローズです。
廊下で咲いていた君子蘭は、枯れ始めましたが、
サンルームでも咲き始めました。
サンルームの君子蘭は素焼きの重い植木鉢に植っているので、
今の私には、移動が難しく、
近年は、切り花用に使っています。
その第一陣です。
これは、妻が通うカトリック二宮教会に飾られています。
サンルームの君子蘭には、
まだ10数本の花枝があるので、
開花の順番に、
切り花として、我が家の玄関等に飾るつもりです。
春を迎えた我が家の花々
長年育てていたアザレヤ、
株を増やしたのですが、元の株だけ生き残り、
しかも、買った時の花は、
下の方に咲いているピンクのしぼりの花
それが、いつの間にか、台木の方が元気に育ち、
オレンジの花が賑やかになり、
接木の部分はようやく生きのこり、2つほど花を咲かせました。
この写真は、これまた長年育て、株を増やしたクンシラン、
廊下に年末に取り込んだ株が、
本格的に咲き始めました。
例年より、早く咲いたように思えます。
下の写真は、庭で本格的に咲き始めたスイセン、
強烈な香りを振りまきながら、
艶やかな春の姿を見せています。
賑やかな春の花々の季節を、
我が家も迎えています。
プーチンとトランプは、同じ穴のムジナか?
渡辺幸男
プーチンのウクライナ侵略は、2014年のクリミア半島の無血奪取に始まった。そして、ウクライナ東部への侵略、2022年の本格的侵略へとつながる。クリミア半島での成功が、ゼレンスキー政権の崩壊、そして傀儡政権としてのウクライナ元首の挿げ替えを目指した、(後から見れば)不用意な形でのウクライナへの全面侵略開始、そしてウクライナ東部戦線での膠着状態、大量の自国兵士の死傷者発生、すなわち自ら泥沼にハマりにいき、引くに引けない侵略戦争へ、そしてその長期化、それなりの「勝利」の実現の困難化、戦争開始の際の目的を大きく割り引いた上でのそれなりの「勝利」の宣言と終戦との困難化へと繋がっている。
2026年のトランプは、もっと短期に、同じようなことをしているように見える。ヴェネゼエラからのマドゥーロ大統領の誘拐、そして自国兵士の損傷なく、ヴェネゼエラ政府の米国政府の傀儡化の実現を達成できたように見える。同じことをイランに対して始めた。イスラエルと組んで、最高指導者の暗殺をはじめとして主要政権幹部の暗殺、その後、イラン政府の傀儡化を実現しようとした。
しかし、である。イラン政府は、ヴェネゼエラ政府の副大統領が受け入れたような米国への自国政府の傀儡化について、これを拒否した。結果、米国は引くに引けない状況に、自らを追い込んでいるのではないか。4〜5週間で侵略は終わり、傀儡政権を樹立できるとのトランプの思惑は、大いに外れそうである。
イランはヴェネゼエラではない。ヴェネゼエラでの成功体験が、悪影響をトランプに与え、泥沼へと誘い、世界経済を混乱させ、米国経済にも悪影響を与え、トランプ政権の存立基盤自体を掘り崩しつつある。
このように見えてくる。どうであろうか。
プーチンがウクライナで犯している失敗を、トランプは、もっと短期で、より過激に繰り返すのではないか。
ここでトランプは、引くことができるか、それが勝負どころであろう。引くことができれば、トランプの政権基盤自体は弱体化するが、とりあえず侵略長期化という泥沼にハマることはないことになる。ただ、自らの面子を重視すれば、引くに引けない状況に陥るであろう。
トランプが、ウクライナ援助をしぶり、プーチンに甘いのは、プーチンと同じ発想の、自国の勢力圏たる近隣諸国に対する力による支配を主張する帝国主義的人間であることの反映ではないか。それゆえ、プーチンの行動を十分理解でき、その発想の大元については、これを肯定し、共鳴するからではないか。このように思えてくる。ロシアのウクライナ侵略について危機感を持って身近に感じているヨーロッパ諸国民とその政府首脳たちとの大きな違いが、そこには存在するようである。
ここまでを、2026年3月10日午後2時までに書いた。
その日の午後2時過ぎに我が家に届いた、フィナンシャル・タイムズのOpinion欄(p.17)で、ギデオン・ラックマン氏がトランプのイラン侵略の問題を取り上げ、‘Trump’s Venezuela plan is failing in Iran’(トランプのヴェネゼエラ・プランはイランでは失敗しつつある)というタイトルで小論を書いている。そのサブタイトルは、「中東での米国の軍事的介入は、すでに、カラカスで使用されたモデルから劇的に乖離している」というものである。
そして、その小論の結論部分の最後の2つのパラグラフで、「トランプは明確に敗北している場合でも、勝利を主張することのできるという極めてユニークな能力を保持している」とし、「事態の一層の追求と迅速な撤退との選択を迫られたとき、彼の気質と政治的利害は、損切りへの選択を目指すであろう」と述べる。ただ、「イランでの勝利を宣言し、撤退するのはそれほど単純なことではないであろう」とし、その理由として「当該地域には、米国の軍事基地群、経済的諸資産、傷つきやすい同盟諸国があり、4万人の米兵がおり、トランプは好きなときに戦争を始められるが、同様に好き勝手なときに戦争を終えることはできず、‘Operation Epic Fury’は、‘an epic failure’(大失敗)となるリスクがある」と締め括っている。
まさにロシアのプーチン大統領が4年ほど前に踏み込んだ道と、トランプ大統領のイラン侵略戦争開始は、あまりにも共通している。ただ、プーチンとトランプでは、性格が大きく異なることを、ラックマン氏は最後に指摘し、トランプが、プーチンとは異なり、不利な戦況のもとでも、勝手に勝利宣言し撤退する可能性を指摘している。が、しかし、両者におけるその性格に違いも、イラン侵略の際の中東での米国の置かれた環境下では発揮され難く、プーチン同様に戦争の長期化、泥沼化へとつながる道を歩まざるを得なくなるかもしれないと、ラックマン氏は締め括っているのである。
帝国主義者としての似たもの同士、プーチンロシア大統領とトランプ米国大統領、ともに、第2次大戦後の世界で保持していた帝国主義的覇権がほころび始めたときに政権につき、帝国主義国としての再興を目指した。その結果が、プーチンの場合は、ロシア以外の旧ソ連諸国でのロシア人居住地域の分離独立、そしてウクライナ政府の傀儡政権化ないしはロシア人居住地域である東部ウクライナの分離、ロシアへの併合となった。また、トランプ大統領の場合では、WTOのルールを無視した高関税による自国内再工業化の試み、そして西半球の米国にとっての勢力圏宣言と、グローバル規模での反米勢力支配の国家の武力による解体の試みとなったといえよう。
ただし、奇妙とも言えるのは、第2次大戦後のような覇権国家、帝国主義国家間の対立としての米ソ(今の米露)対決となっていないことである。ロシアがグローバルな覇権国家としての力を失ったこと、旧ソ連、そして旧ロシア帝国領土の回復を目指すに留まらざるを得ないことが、このような米露対決とはなっていない理由であろう。21世紀20年代の覇権国家は、米国と中国ということなのであろう。
覇権国家から脱落した旧ソ連の継承国家としてロシア、そして覇権国家としての存立が怪しくなってきた米国、その両者に似たような帝国主義的志向の大統領が生まれ、それがウクライナ侵略戦争を引き起こし、イラン侵略戦争を引き起こしたのであろう。
いずれにしても、今、注目すべきは、トランプがラックマン氏のいうように、とにかく勝手に勝利宣言を出し、一方的に対イラン戦争から撤退することができるかどうかであろう。それが可能であり、その可能性を選択しえるのがトランプであるとも言えるのであるから。泥沼にハマらざるを得なかったプーチンとの大きな違いである。
同じ穴のムジナであるプーチンとトランプであるが、同じムジナでも性格が大きく異なる。自らの思惑外れた時、失敗の締めくくり方が、両者で大きく変わるかもしれない。あるいは、性格が大きく異なるムジナだが、環境がもたらす強制力の方が強く、それが性格の異なるムジナの行動を最終的に決め、結局、両者で同じような結果、戦争の長期化をもたらすのであろうか。
このような状況がもたらす結果は、他人事ではなく、我々の生活がかかっていることではある。が、興味深いことでもある。
日経とFTの記事から見たロシアの非工業化の進展
日経記事 薬文江「中国 半導体装置を国産化」
日本経済新聞、2026年1月31日(12版)7ページ
FT記事 Seddon, M. & C. Cook ‘Russia remains dependent on foreign tech’
Financial Times, 2 Feb. 2026, p.2
を読んで 渡辺幸男
サブタイトルが「昨年、世界上位20社に3社」「米の輸出規制で台頭」という、日経の記事は、世界の半導体製造装置メーカーの売上高上位20社について、2022年と2025年(見込み)のそれぞれの年のそれをリストアップし、それを国別に見た場合、どのような分布に変化したのかを見たものである。
掲載された表によれば、上位20社の中では、日系企業が多く、2022年には8社、2025年には9社となっている。そして、それについで、EUの企業が両年とも5社、米社は22年が3社、25年が2社である。そして、22年はそれ以外では韓国が2社、シンガポールが1社、中国が1社であるのに対し、25年には、中国が3社、シンガポールが1社で韓国がゼロである。すなわち、韓国の2社にかわり、中国が2社増えて3社となった表である。変化としては、中国系企業の躍進が目立つ形となっている。記事自体も、その見出しから分かるように、この中国装置メーカーの躍進に注目したものである。
ただ、私の視点ないしは最近の関心からは、別の点が改めて気になった。すなわち、世界の主要工業国がこの表の企業の出身国として掲げられ、ほぼすべて、すなわち、EU、米国、東アジアの日本を含め韓国等が挙げられ、その中に中国も入ってきている、というのであるが、旧ソ連という「先進工業国」であったはずの経済圏、旧ソ連圏出自の諸国家の製造装置企業が皆無という事実である。旧東ドイツは現在のドイツの一部になっていて、エキサイトという企業がドイツ系企業として表に出ており、勉強不足の私には、その企業の由来をわかっていないので、厳密な議論ではないが、何れにしても旧ソ連邦から分かれた諸国の企業は皆無ということは事実である。
半導体産業に詳しい人から見たら、旧ソ連出自の国の半導体製造装置企業が、この表で皆無なことは当たり前過ぎることなのかもしれない。私も、旧ソ連が達成していた「先端工業」のなかにおいて、IT関連の工業が非常に遅れていたことは多少知っていた。が、旧ソ連解体後35年が経過しても、半導体製造装置において、有力企業が皆無というのは、現代の先端工業での半導体の占める位置が大きいだけに、やはり注目すべき点であると思われる。
それに対して、中国は、ということになる。旧社会主義体制が崩壊した時点では、明らかに先端的な工業と言える工業は、旧ソ連と異なり、市場競争力があるかどうかを別としても、保有していなかったといえよう。それが、30年余のうちに、有力な半導体製造装置メーカーが何社も登場している、ということになる。
この際、決定的に重要なのは、そして政府の積極的な育成策以上に重要と私には思われるのは、この記事にも書いてあるように、中国市場が半導体製造装置市場としても世界の4割を占める市場であるということであろう。この巨大な国内市場、強大な半導体需要とその生産のためのこれまた巨大な製造装置の国内需要を前提に、中国政府の支援策を活かし、かつ米政府規制による先端的製造装置の輸入困難化が重なり、極めて多くの新生の半導体製造装置メーカーが中国内で誕生し、激しく競争し、その中のいくつかの企業が急成長したということができる。もちろん、既存の米欧日韓等の半導体製造装置メーカーが存在しながらの成長は生やさしいことではないと言えるが、自国市場が巨大な市場であることは、自国系の企業が有力企業として成長するための極めて重要かつ有効な条件であることは、当然のことといえよう。
それに対して、ロシアはどうであろうか。EU市場と一体化し、その市場でのIT需要、そして半導体需要の大きさを活かし、積極的にIT産業育成策を実施し、それに成功していれば、旧ソ連解体後の市場経済のもとでの35年の年月は、新たな半導体製造装置メーカー等のIT産業での有力企業を育成することも、中国がそうであったように、論理的には、可能であった時間の長さといえよう。しかし、結果はこの記事が象徴的に示しているように、旧ソ連圏、ましてや旧ソ連邦の後継諸国では、半導体製造産業それ自体も育たなかったし、ましてやそのための製造装置産業企業も育たなかった。少なくとも、有力半導体製造企業群とそのための製造装置産業企業群の形成について、ロシアの工業について関心を持つ人間の一人である日本の私には伝わってきていない。中国との大きな違いである。このような状況を、改めて示したのが、この記事であるともいえよう。
これをどのように見るべきか。ロシアの人口1億4千万人余、これに旧ソ連の他の諸国、ソ連経済圏の諸国、そして旧ソ連崩壊後急接近したEU市場、これらを合わせれば、十分巨大な現代工業が発展する市場の大きさである。EUと旧ソ連圏諸国市場、EUに加盟した諸国を別とすれば、必ずしも市場として一体化したとは言えないが、旧ソ連解体後にロシアが市場経済化を急速に進める中では、ロシア経済はEU市場を前提にしていたといえよう。
ただし、欧州市場でのロシアの基本的な位置は、早急な市場経済化を実行したこともあり、「先進工業」製品をそれなりに製造可能であったロシアであるが、その工業の担い手の諸企業には市場競争力がほぼなく、市場開放によりほぼ壊滅、ないしはロシア国家により政策的に維持されるだけの存在になったようである。他方で、豊富な一次産業、農産物や鉱産物については、豊富な天然資源と自然環境とにより、当面の競争優位を、欧州市場で形成し得た。結果、欧州市場の中の一次産品供給国として、その存立を拡大し、他方で、あるいは「それゆえに」とも言えるかもしれないが、「先進工業」部分の市場経済下での先端工業化には失敗した。しかし、それなりに豊かにはなった。このように見ることができよう。
国内市場として潜在的には巨大であったが、あまりにも低価格志向の市場であり、先進国工業製品では資本財も含め高価過ぎ、当時の先進工業製品が国内市場向けに浸透しえなかった中国との大きな差異と言えよう。結果、中国では、国内市場を出発点として、極めて多くの市場経済に適合した新興企業が育ったが、ロシアではそのような新工業企業の簇生は、工業分野では生じなかったように見える。
その中で、ロシアによるウクライナ侵略が試みられ、米欧日等から経済制裁をロシアは被ることとなった。結果、欧州市場への一次産品輸出国として、欧州市場の中で一定の地位を確立しつつあったロシア経済だが、制裁の結果、欧州市場への一次産品輸出国としての存立に依存しては、それなりの成長どころか、ソ連解体後に実現した国民生活水準を維持することも難しくなった。
以上の日経記事に触発された文書を書いているうちに、下記のようの記事が2026年2月2日付のFTに掲載された。上記の記事に対する私の感想と大きく関係するので、その紹介と、それを通して、私が感じたことを書いてみたい。
FTの記事は2月2日付のものの2ページに掲載された、Seddon, M. & C. Cookの共著の記事で、タイトルは ‘Russia remains dependent on foreign tech’とあり、副題は、「クレムリンの内部文書は、基幹的な制裁されている輸入品に代替するための戦いを示している」とされている。
私の関心に基づき、記事の内容を要約的に紹介すれば、まずは、紹介されているロシア政府の内部文書では、ウクライナ侵略以来西側の技術への依存を弱めようとしてきたが、ドローン等の重要な軍事製品製造技術領域で輸入に依存し続けているとし、2030年までに技術的自立を獲得するようにロシア経済を転換することが必要であるとしている、とのことである。
しかし、それに対し、記者たちは、ベルリンの専門家の意見を紹介し、現行では海外からの基幹的技術製品であまりにも大きく輸入に依存していることから、ロシアの計画は極めて楽観的であるとしている。また、西側の制裁で、技術的に充足することがロシアの多くの分野で困難になっていると、その専門家は指摘している。例えば、ロシアの最新型の巡航ミサイルの部品の50%ほどが多様な国の多様な部品を輸入してできている。そのような状況のため、制裁によりロシアは中国から調達せざるを得なくなり、中国はロシアが輸入するマイクロ・エレクトロニクス製品の90%を供給している、と指摘している。
また、旅客機不足を補うための努力もうまくいかず、西側の部品供給が途絶したことで、改めて開発し直さねばならなくなっている。また報告書はロシアの基幹部門の企業の80%が、現行の46%から2030年までにロシア製のソフトを使用するようになると、ファンタジーと言えるような予測をしていると、専門家は見ている。
この記事の紹介からも、ロシアの技術面での西側依存、特にIT産業関連での技術的自立性の欠如が理解されよう。ロシア製の最新の巡航ミサイルの主要部品の多くが、西側の企業の製造した部品であり、西側諸国の制裁に対応し国内生産へ移行することができないのである。また、西側の制裁が本格化してから、すでに数年経過した時点での上記の報告書で、今なお、過半の主要企業が西側企業の開発したソフトを使用している状況ということでもある。
このような状況をなんとかしなければ、という意識はプーチン政権内部にもあるようで、プーチン大統領の任期である2030年までにはなんとかと考えているようである。ということは、ウクライナへの侵略戦争はプーチンが満足する形での終わりは見えていないのに、あと4年しか無いことになる。西側から半導体製造装置も輸入できず、中国製の装置だけで、どの程度のものを作ることができるというのであろうか。たとえ、半導体の設計自体はできたとしても、先端的な半導体をどんな製造装置によって、誰によって組立、西側から輸入しているそれに変えるものを作ることができるというのであろうか。
ウクライナ侵略が本格化し、西側の経済制裁が本格実行される中で、すでに4年が過ぎようとしている。その状況の継続下で、ロシアのIT産業の本格形成が本当に2030年までの残りの4年でできると考えているのであろうか。ましてや、中国へ依存でき、中国はそれなりに先端的に近いIT製品を生産できるのであり、そこからの輸入に依存することが可能である。そのような状況にあり、かつ、ウクライナ侵略戦争遂行とそこでのそれなりの「勝利」が第一であるロシアそしてプーチンが、内製へと切り替えるきっかけを掴めるのであろうか。
国内産の製品がたとえそれなりにできるようになったとしても、試作品を試用し、本格使用を目指すような余裕が、兵器生産の企業を含め今のロシアの企業群にあるのであろうか。私には、プーチンそしてロシア政府にそのような余裕はなく、その時使えるものがあれば、それを優先、すなわち、中国製の部品を優先して使用し、国内での試作品の試用を行う余裕など皆無のように見える。まさに記事にあるように、2030年までに、というのは、‘fantasy’、夢物語であろう。
試作用の部品ができる、ということ自体も、市場経済化したのちのロシア企業の行動を、それなりに見てきたものにとっては夢物語そのものとは思えるのだが。ましてや、実用化できるというというのは、・・・???である。
このように2月に入ってからの日経とFTの2つの記事を見てくると、ロシアの工業の現状の今の「先進工業」からの遅れ、否、相対的な後退が見えてくる。そして、それを逆転し遅れを取り戻そうというロシア政府の意思は存在していそうである。だが、ウクライナへの侵略は、意図的にはロシア工業の自律的再先進工業化を志向していたとしても、本格的国内生産に向けての試行さえ無理であり、結果的には、西側の工業への依存から中国の工業への依存へと調達先を押し曲げるしか選択肢はないと言えそうである。結果、ウクライナ侵略の長期化は、ロシア工業の非先進工業化そして非工業化のさらなる促進をもたらすことになりそうである。
ウクライナ侵略の長期化により、2030年までのプーチン政権下での先進工業化、非「非工業化」の実現は、その端緒だけだとしても、無理であり、夢物語そのものであるといえよう。私には、このように見えてくる。
できれば、2030年のロシアの工業状況を、この目で直接は見ることができ無いにしても、新聞等の情報を通してでも、見てみたいものである。非工業化がさらに進行した2030年代のロシアは、完全に中国経済圏の一次産品供給国化しているのでは無いか、と私は予測しているのだが。