2017年12月25日月曜日

12月25日小論 22日付日経記事を読んで、     「水平分業」とは

小論 12月22日付日本経済新聞の2つの記事を読んで考えたこと
「ニッポンの革新力 世界から考える 4」(20171222p.1
「半導体生産で岩手に子会社 東芝」(同、p.15

論点1 「水平分業」とは何か。
論点2 いわゆる「水平分業」は、半導体産業全体、
       さらには他産業全体に有効なのか、その限定性はないのか。
論点3 いわゆる「水平分業」が有効な産業とそうでない産業で、
       何が異なるのか。
まとめ 

論点1 「水平分業」とは何か。
 1面の記事の見出しは、「脱自前 創造の土壌に」と「台湾発 高まる分業の波」である。そこではまず半導体について、ルネサスエレクトロニクスが取り上げられ、これまで、開発から製造までについて、自前での半導体生産に携わってきたルネサスが、台湾のファウンドリ、TSMCに製造委託をし、「復活してきた」という話である。そのあとTSMCの簡単な紹介があり、「「アイデア勝負の開発と巨額投資が必要な生産は分けた方が有効」」というTSMCの張董事長の考えを示し、「半導体産業に分業という新しい形を持ち込み、世界で浸透させた」とTSMCの話を締めくくっている。
 すなわち、半導体産業において、これまで開発から製造まで同一企業内で行う垂直統合型の生産形態が一般的であったが、ファウンドリの出現により、開発のみを行うファブレスメーカーと受託生産企業との、社会的分業を中心とする形態へと、社会的分業形態がシフトしたと紹介している。
 私が奇妙に感じる記事の表現での問題は、ここからである。このような垂直統合すなわち垂直的生産段階の企業内包摂からの変化を「水平分業」と呼んでいることである。垂直分業の垂直は、「水平」分業の水平が同じ製品や同じレベルの異なる部品の開発、あるいは製造、それぞれについて同一内容分野での社会的分業であるのに対し、開発から生産までの諸段階、部品生産から組立までの諸段階といった生産諸段階間の関係を意味している。さらに言えば、この場合は、どうも「分業」についても企業間分業のみが分業だと考えているようである。しかし、分業とは、アダム・スミスがかの『国富論』で論じたように、工場内での職人間で分業、職人の特定工程への専門化により生産性が上昇するという、工場内分業から始まった言葉である。
 TSMCとルネサスが今般始めた企業間分業、経済学的表現では「社会的分業」関係は、垂直的な開発と製造間での社会的分業であり、本来「垂直的企業内分業」からの「垂直的社会的分業化」というべきであり、簡略化して表現するとしても「垂直分業」、丸川知雄教授風に言えば「垂直分裂」ということである。この記事が使用している「水平分業」が、本来的に経済学的に意味する、半導体製造の同じ段階での生産を行う企業同士という意味で「水平」的社会的分業では全くない。
 表現として不適切な表現を使っていること、この点が論点1に関するものである。

論点2 いわゆる「水平分業」は、半導体産業全体、
       さらには他産業全体に有効なのか、その限定性はないのか。
 今ひとつ奇妙な点がある。「日本勢は垂直統合にこだわり衰退の道を歩んだ。開発から部品調達、製造までを自前で手がけるのは非効率で海外勢とコスト競争力の差が開く、かつて強さの源泉であった垂直統合が弱みに変わり、世界でシェアを奪われた」と述べている。そして、それの事例として「デジタル家電」と「バイオ医薬品」の例が取り上げられている。
 同じ日の日経に、「半導体生産で岩手に子会社 東芝」という記事が15面に小さく載っている。これは、半導体の中でも、フラッシュメモリーでの世界第2位のメーカー東芝が、製造工場を自ら北上市に新設することを発表したという記事である。当然のことながら、東芝は「次世代型3次元(フラッシュ)メモリー」の開発企業であり、同時にその量産のために工場も自前で建設するというものである。
 この2つの記事が、同じ半導体産業を扱うものとして、同じ日の日経に掲載されていたことは、大変興味深いことであるといえよう。1面の記事は、半導体生産では「水平分業」(本来的には垂直的社会的分業だが)形態が最適であるとしながら、15面の記事では、半導体フラッシュメモリーのグローバル市場で競争力を持つ東芝が、グローバル市場での競争力を維持するためにも、新しい世代の半導体を開発するのみならず、自社で量産工場を建設すると報じているのである。
 ここから、何を読み取るべきか、大変興味深い点である。
 1ついえることは、半導体産業といえども、どのような半導体でも、「水平分業」が有効であるとはいえなさそうである、ということである。垂直統合形態でのメーカーがグローバル競争力を持つ半導体もあるということである。ちなみに、フラッシュメモリーのトップメーカーであるサムスン電子も、当然のことながらフラッシュメモリーについては垂直統合形態で生産している。また同じメモリーだが機能の異なるDRAMでも垂直統合形態で生産し、同様に垂直統合形態で生産していた日系企業を全てDRAM生産から退出させるという形で、サムスン電子はグローバル市場で勝利を収めている。「水平分業」化によって優位に立ったのではない。
 当然といえば当然すぎるのかもしれないが、日系企業でグローバル市場での優位を維持している製品分野、産業の中で、最も規模が大きく、優位を長期間維持しているものと言える産業は、乗用車産業であろう。ここでは、依然として開発から量産まで「垂直統合」で行なっており、ファブレスメーカーの競争優位は、グローバルに見てもほとんど存在しない。

論点3 いわゆる「水平分業」が有効な産業とそうでない産業で、
       何が異なるのか。
 半導体のうちファブレスメーカーが輩出し、ファウンドリが製造を担っている部分の多くは、クアルコムやメディアテックといったファブレスメーカーの製品から示唆されるように、製品内容が大きく変化しているような半導体製品分野である。それに対してメモリーについて言えば、その集積度や生産のための技術については急激な進展を伴っているが、製品内容や使用価値的には大きく変化していないものと言える。
 また、先に見たように、日系企業が垂直統合を維持しながらグローバル市場での優位をも維持している典型である乗用車産業に関して言えば、製品内容や使用価値が漸進的にのみ変化してきた上に、生産技術的にも飛躍の小さい漸進的な進展という傾向が強い。100年以上前のフォード生産システムに改良が付け加えられての、現代の生産システムと言える。音声再生装置でのレコードからCDといった製品内容とそれに伴う生産技術の大きな変化のような、大変化は乗用車市場では、まだ生じていない。
 メモリーを含めた半導体の生産技術の発展は、それに比して桁違いの速さと言える。また、生産方法も段階的に大きな変化を経ていると言えそうである。ただし、メモリーについては、製品内容の高度化と生産技術の進歩は、他の半導体同様、あるいはそれ以上に急激であるが、使用価値的には大きな変化はなく、かつ製品内容そのものとしても、急激な高度化は生じているが内容としての大きな変化に見舞われることなく、市場の急拡大を、変動を伴いながらも実現してきている。
 ここから見えてくることは何か。
 第1に、製造業のあり方全体が、いわゆる「水平分業」すなわち垂直的社会的分業を開発と製造との間で行うことに向かっているわけではないということである。市場のあり方、技術の変化のあり方、変化する技術の内容の違い等、ファブレスメーカーと受託生産者との「垂直的社会的分業」が有効な製品分野と、そうでない分野とが存在する、ということである。さらに言えば、かつては広範には存在しなかった、開発企業と製造企業間の「垂直的社会的分業」が適合的な分野が、相対的に多くなってきた、ということを示唆していると言えそうである。
 第2に、ファブレスメーカーと受託生産者との社会的分業が有効な分野の特徴は、ファウンドリーやEMSの事例を見る限り、また、ファブレスメーカーの存立分野を見る限り、市場と技術発展に一定の特徴があると言えそうである。
 ファブレスメーカーがファブレスメーカーとして生産そのものを担わなくて競争し、優位に立つことも可能であるということは、ファブレスメーカーが存立する製品市場分野が、新製品が常に生み出される市場分野だということができる。この点で最も早期にそのような市場を構築したのは、筆者の既発表のブログにも書いたが、電子機器やIT関連市場分野ではなく、アパレル市場、特にファッション性の高いアパレル市場ということができよう。
 多くのアパレルメーカーはファブレスであり、製品開発だけを頻繁に行い、新製品で製品差別化に成功するかどうかで、競争している。生産技術そのものはそこでは相対的に安定し、参入が相対的に容易であることから、競争も激しく、日本では産地型産業で多くの中小企業が担っている分野でもある。一定部分のアパレル市場では、製品開発による製品の常なる更新、さらには、製品技術の革新こそが競争優位の根源であり、それらの市場向けに製品開発する企業の多くは、生産を担当する企業に委託し、委託先企業を系列化し、従属的に使用することはあるが、生産そのものを垂直的に統合することはほとんど存在しない。この点については、日系企業に限らず、グローバルに優位に立つファッション性の強い製品を開発しているアパレル企業に共通して見られる傾向といえよう。
 ファブレスメーカー化する論理は、以上のアパレル産業の事例から示唆されるように、市場での新製品の頻繁な開発の必要性と、新製品の内容の変化の激しさということになろう。
 他方で、半導体産業や電子機器産業でのファウンドリやEMSといった巨大受託生産企業が形成されるには、他の論理がそれに加わったことによると思われる。製造技術自体が半導体生産や電子機器のように、製品横断的に応用可能な技術であり、製造装置への投資が、特定の半導体製品や特定の電子機器に限定されない幅広い半導体や電子機器の製造用の装置として機能しうるということ、ただし、この点はアパレルとも共通する側面が存在する。さらに、その製造技術の規模の経済性が大きいことと、製造技術それ自体としての技術発展が急激であること、これらのことが要因として重要であるといえよう。
 ファブレスメーカー自体にとって、あえて製造分野へ進出するとなると、既存の製造技術ではなく、製造技術としての独自な開発、そして先端的製造技術の追求が必要となるのが、これらの分野の特徴である。製品技術で差別化可能な分野、しかも常なる製品技術開発を継続していくことが不可欠な分野のファブレスメーカーにとって、同時に製造技術でも同様な開発投資と設備投資を行うことは、外部に受託専門の先端製造技術の企業が存在する限り、競争上無意味なことと言える。

まとめ
 以上のように見たとき、20171222日の日経の記事は、どのように見ることができるか。この点を、最後に検討したい。
 まずは、市場特性の異なる分野について、社会的分業のあり方が異なる蓋然性が高い、という点を1面の記事は理解していないということが言えよう。それゆえ、15面の記事と矛盾するような叙述となったのである。双方の記事とも、一定の妥当性があり、それは同じ半導体生産をめぐる分業についてであるが、半導体により市場特性が異なることを理解していないことにより、矛盾するかと思えるような記事となったと言える。
 さらに言えば、記事でいう「水平分業」、本来的には垂直的社会的分業の進展を、あたかも、製造業全体の趨勢として把握しようとするような姿勢こそ、問題が大きい発想であり、1面記事の最大の問題点といえよう。産業発展の中心的存在を構成する市場群が、異なる特性を持つ市場群になり、その変化に日系企業の多くが、対応できないこと、というより、既存の成功企業が発展市場の中心のシフトに対応できないこと、これが1面の記事が示唆することの中心であるといえよう。米国でも台湾でも、記事に出てくる企業の多くは、新興の急発展企業であり、20世紀の産業発展を担った近接産業の巨大企業ではないのである。IBM、ゼロックス、フェアチャイルド等々、いずれもこの垂直的社会的分業が一般化した市場の主役ではない。

 日系製造業の問題点があるとしたら、既存企業が変化に対応しきれないことではなく、新たな市場に適合した新興急成長企業が少ないことにあると言えるのではないか。この点こそ、問われている「日本の革新力」、すなわち日系企業の革新力の問題点ではないか。

2017年12月21日木曜日

12月21日 初冬のエントランスと冬越しの花々

我が家のエントランス、
初冬を迎え、
蕾をつけたクリスマスローズと、

軒下で生き残っているサルビアや金蓮花だけとなり、
もっとも彩が寂しい季節を迎えました。

ただ、テラスの内側は花盛り、
初冬の陽光に輝いています。

サルビア、金蓮花、ゼラニウム、インパチェンス、
ノボタン、エンゼルイヤリング
こんな花が賑やかに咲いています。

ベランダのビニールカーテンの内側でも、
金蓮花、ゼラニウム、サルビア、
オキザリスといった花が、
賑やかです。

マーガレットやカランコエは蕾をつけ始め、
セッコクも花芽の準備中。

あと少し経つと、庭の苗が育ち、
エントランスも、
ノースポール、西洋サクラソウ、ビオラで
賑やかにできるのではと考えています。

2017年11月28日火曜日

11月28日 エントランスの紅葉


我が家のエントランスが、晩秋を迎え、
紅葉が見頃になりました。

エントランスにはモミジが2本、左右にあります。
植木屋さんの手入れが、今年はすでに入り、
手入れされた柘植の木とモミジ、
常緑樹と紅葉、いい感じです。

昼間の灯篭と紅葉

夜になり庭園灯がつくと、
このようになりました。
紅葉が冴えます。

上の写真は、2つ庭園灯がついたのに対し、
下の方は1つだけ、
多少雰囲気が違います。

エントラスの花々は、
サルビアとインパチェンスと金蓮花、
それらも、だいぶ寂しくなりました。
冬の西洋サクラソウとノースポールの花が賑やかになるには、
いま少し時間がかかりそうです。
現在、庭の陽だまりで育苗中です。

2017年11月19日日曜日

11月16日 今年のはぜの紅葉

今年は11月16日ごろに我が家のはぜの紅葉が、
見頃を迎えました。
朝の7時過ぎ、朝日がはぜの下の木々の間から差してきました。
はぜの下側が朝日に照らされ、素敵な雰囲気になりました。

朝の8時過ぎには、
全体に陽が当たり、青空にはぜが輝いていました。

下の写真は、昨年11月20日の同じはぜの紅葉です。
今年は、色が多少オレンジ色気味で、
早めに紅葉のピークを迎えたようです。

2017年11月12日日曜日

11月12日 小論 田中幹大論文を読んで

 田中幹大論文は、大阪の機械金属工業での基盤産業の形成を、いくつかの製品分野に属するとされる機械金属工業中小企業の扱い製品構成とその変化から見ていこうとしている。大変興味深い論考である。
 以下、抜き刷りをいただき、読了し、感じた、勝手な感想を述べたい。

田中幹大「中小機械金属工業と機械工業の「シフト」
 −195060年代大阪のミシン、繊維機械、自転車−」(1)(2)
(立命館経営学562号、3号、20177月、9月) を読んで
渡辺幸男
1、      田中論文について

上記論文の目次
 Ⅰ はじめに
 Ⅱ 先行研究と資料
 Ⅲ 大阪ミシン産業と中小機械金属工業
 Ⅳ 大阪ミシン産業における中小機械金属工業の製品転換
 Ⅴ 大阪繊維機械産業における中小機械金属工業の製品転換
1.    大阪繊維機械産業と中小機械金属工業
2.    大阪繊維機械産業における中小機械金属工業の兼業・転換品目
 Ⅵ 大阪自転車産業における中小機械金属工業の製品転換
1.    大阪自転車産業と中小機械金属工業
2.    大阪自転車産業における中小機械金属工業の兼業・転換品目
 Ⅶ 小括

 田中幹大氏による本論考は、工場名鑑といった資料を利用し、極めて丁寧に、大阪の機械関連の中小企業中心の産業、すなわち戦前からのミシン、そして戦後の繊維機械、自転車の3産業での、中小機械金属工業企業の扱い製品の状況とその変化を、時系列的に追いかけた研究である。それを通して、多くの機械金属工業中小企業が、多様な方向性をもって扱い製品内容を変化させ、また同時に複数の製品に関わっていることを実証している論考である。
 結果として、調査の最初の時点から複数製品分野での生産を行なっていた企業も少なからず存在していること、戦後大阪の主要機械工業となった電気機械等へと転換した企業も数多く存在していることを明らかにしている。また、その転換先は特定製品分野に集中することなく、極めて多様であることも明らかにしている。
 また、工業統計表等では、特定業種に振り分けられてしまった結果の数字でしか、業種構成を把握できない。本論考では、そうではなく、工場名鑑等を利用することで、振り分けられた特定機械関連の業種分類以外にも、当該機械の生産に携わっているとする企業が数多く存在することも明らかにしている。
 すなわち、個別企業レベルでの多様な製品分野との同時並行的関わりとともに、業種分類を前提にしては見ることのできない、産業レベルでの多様なつながりの存在、それとそれを時系列的に見た場合の大きな変化、これが大阪の機械金属工業中小企業の存立実態であることを明らかにしている。これに本論考でも言及されてはいるが、直接は扱われなかった新規開業企業の多数かつ多様な状況を加えることで、大阪の機械金属工業の基盤産業の形成過程やその存立状況といった側面が明らかにされていると言える。
 以上を解明した論考として、大変興味深く、多くを学ぶことができた論考であった。その上で、本論考の提示している図表を通してだけでも、結論的に、もっと強調して良いと私が思うことは、当初より複数の製品に関わっていた企業が、少なからず存在していること、この点の確認である。さらに、このことの持つ意味の検討を行えば、本論考での資料の範囲内でも、より内容的に深まったのではないか、と感じた。

2、現代の機械工業の社会的分業構造
 その上で、広域的な生産体系を含め、それぞれの企業がどのような形に専門化し、存立しているかについての私の認識を前提とし、第2次世界大戦前後の状況に遡った時、本論考に関して、物足りなく感じた点がある。
 現代の機械金属工業の社会的分業構造を考える際、まず考慮すべきは、当然のことながら、完成品の生産か部品の生産か、という分業である。同時に必要なのは、それぞれの生産において、どのような機能を企業内に保有しているかどうかでもある。すなわち、同じ完成品の生産を行なっている企業でも、その製品の企画・開発・設計そして生産の全てを同一企業内で行なっている企業もあれば、企画から設計までを社内で行い、あとは全て外注するという、アップル社のような企業(ファブレスメーカー)も存在する。他方で、鴻海精密工業のように、製品それ自体については企画・開発はせず、受託生産のみであるが、生産設計そして部材調達等を全て社内で行うような Electronics Manufacturing Service企業(EMS)のような企業も存在している。また、発注側の指示に従い設計の一部を担う設計サービス企業もあれば、同様に発注側の企業の図面に従い特定の加工のみを受託生産する企業も存在する。
 当然のことながら、完成品を企画設計し販売する企業は、たとえ実際に生産機能を社内に保有していなくとも、特定製品の「生産」に専門化している企業と言える。それに対し、EMSは字義通り、電子製品や電子完成部品を組み立てるサービスを提供する企業であり、完成品や完成部品の「生産」機能を担うが、特定製品の「生産」に専門化しているのではない。電子製品の組立サービス業務に専門化しているのである。同様な受託組立企業は電子機械以外の機械の場合は、OEM企業すなわち受託組立サービスに専門化した企業ということになる。これらの企業は、本来的には調査時点で扱っている製品の種類で業種分類することは、社会的分業構造を考える際には、ミスリーディングとなる可能性がある。しかしながら、業種分類上は、両者が区別されず一体で集計される可能性があったり、前者は「生産企業」ではなく、後者だけが「生産企業」として計上されたりする可能性さえある。
 私自身もかつて混乱していた点であるが、例えば、機械工業の例ではないが、このような関係は、アパレルメーカーと受託衣服生産企業との関係でもある。アパレルメーカーはメーカーとされるが、物的な意味での「生産」はしていない。しかし、現在の私の理解では「生産」している、まさに製品の企画・開発・設計をし、製造のみを委託する「メーカー」である。縫製業企業等の受託衣服生産企業は、通常衣服の「生産企業」として計上されるが、縫製サービス提供企業と見るべきものであろう。
 同じように完成部品や汎用部品を生産する企業とは、それらの部品を企画・開発・設計し販売する企業ということになる。他方で、他者が企画・開発・設計した部品を、「生産」について受託し実際に組立生産をするだけの企業は、これまた電子部品であればEMS、その他の機械の部品であればOEM企業ということになる。
 さらに、機械関連の部品の特定加工部分だけを受託生産する企業群が、機械工業に数多く存在する。これらの企業は、特定の部品の生産に専門化しているのではなく、特定加工に専門化している特定加工専門化サービス企業である。プレス加工に専門化し、他社からプレス加工を受注生産している企業は、プレス加工サービス提供企業として加工の種類に従い業種分類され、特定加工のサービス企業であることが、ある意味明確に示される。その際、多くの場合は、特定の素材について一定の幅の精度と量産規模を前提とした加工に専門化している場合が多い。それらを前提に、実際に幅広い製品分野の部材の加工を受注しているかどうかは別として、プレス加工を必要とする部材の加工を、幅広い製品分野から受託生産可能となる。逆に、もっぱらどのような製品の部品のプレス加工をしているかは、業種分類では見えなくなるが。
 他方で、特定の切削加工等に専門化している企業は、プレス加工に専門化している企業同様に、特定加工に専門化し、その加工について受注し、加工生産サービスを提供しているのであるが、既存の業種分類では、その加工対象が最終的に組み付けられる製品分野に応じて分類され、加工に専門化したことを反映する形で分類されない。同様の部品を企画・開発・設計し(生産し)ている企業と同様な業種分類となる。しかしながら、部品生産への関わり方としては、両者で全く異なっている。
 工場名鑑によって、これらの点を解明することは、極めて困難であるが、機械金属工業の存在形態を考える上では、極めて重要である。例えば、現在も存続している企業等への聞き取りで補うならば、この点での社会的分業上の状況変化も、ある程度解明することが可能であろう。特に、乗用車と異なり、本論考で取り上げられた機械のうち、家庭用ミシンと自転車については、規格化が業界横断的に形成されており、企画開発を行っていた部品メーカーは、特定顧客からの独自仕様の部品についての受託生産ではなく、業界標準規格の部品の生産を行うことになる。ましてや、後発工業化国として日本の家庭用ミシン産業や自転車産業は、補修用部品を中心に部品生産から当該製品の生産に参入している。この点は、本論考が最初に紹介している家庭用ミシンの輸入業者の部品生産への進出からも示唆されることである。
 このような視点で工場名鑑での関連製品分野の叙述を眺めると、部品の生産を行なっている思われる回答企業にも、切削加工に専門化した加工サービス企業を含め、特定専門加工サービスの提供に特化し、たまたま調査時点でいくつかの製品の部品の加工を行っていた企業と、本来的に部品の企画開発生産を行い、特定部品のみではなくいくつかの製品分野の部品を生産していた企業とが共存していた可能性が示唆される。もし、このような状況が存在するのであれば、特定専門加工サービスに特化していた企業は、多様な製品分野の特定専門加工を受注するのが、本来的な状況であり、多様な製品分野に進出しているということではなく、また、時系列的に見て製品内容が変化したとしても、業種転換あるいは製品転換を行ったことを意味しないということができよう。単に業種分類上の多数性製品の移動や転換ということになる。
 さらに言えば、大阪の機械金属工業中小企業の存立形態として、特定専門加工サービス企業が当初より幅広く形成され、大阪での多様な機械工業の発展の基盤を形成していたということになる。業種転換を通して、新たな製品分野への進出が実現したのではなく、専門加工サービス企業として多様な製品分野の企業のニーズに対応したということになる。
 本論考の中で紹介されるナットフォーマーを極めて早期に導入した企業の例も、多様な製品分野に共通するナットという汎用部品的な部品の生産企業であり、他の製品分野の部品メーカーから量産製品分野へと業種転換したというよりも、それがより量産的な需要が汎用部品である場合が多いナットに生じたがゆえに、ナット生産メーカーの存立の一環としてフォーマーを導入し、量産的需要への対応を行ったと見ることができよう。ただし、ナットフォーマーを導入した企業の場合、乗用車生産向けについては、汎用部品生産から特定乗用車向けの相手側仕様の受注生産と変わった可能性が存在する。もしそうであれば、この部分については、汎用部品生産とは言えないことになる。しかしながら、量産ナット用のナットフォーマーの導入であり、乗用車向けの特注ナット専用機ではなく、多様な製品分野のナットを量産可能であり、量産ナットを必要とする製品分野であれば、どのような業種の製品にも対応可能と見ることができる。特定乗用車向けの冷間鍛造部品の受注生産メーカーというよりも、ナットメーカーとして乗用車向け特注部品にも対応している、と見るべきであろう。当然ながら、ある1時点で見れば、乗用車向けの部品生産が当該企業の生産量の圧倒的部分を占めていることも十分ありうる。しかし、同時に、当該企業はナットメーカーとして多様な製品向けの需要に対応可能な部品生産企業であることには変わりはない。
 
3、まとめ
 以上長々と勝手なことを述べて来たが、私が言いたいことは、機械金属工業中小企業には、特定製品や特定製品の部品の企画開発設計(そして生産)に専門化した企業と、機械金属工業全体の基盤産業を構成する汎用部品に専門化した企業や特定加工サービスに専門化した企業が存在し、社会的分業構造の意味の考察のために製品分野の変化を考えるときには、この3者を念頭に置き、できる限りわけて見ていく必要があるということである。
 さらに、単に主要扱い製品に変化があったかだけではなく、対象の機械金属業中小企業について、この3者の間での移動があったかどうか、これも重要になる。特定の製品の部品についての企画開発(と生産)を行うメーカーが、そこで培った加工技術を活かし、加工サービス企業といったような製品の部品の加工を受注する方向での転換、このようなものを見ていくことが重要であろう。本論考で言及された私の書いた論考での自転車産業での転換の事例は、自転車の標準規格部品を生産していた部品メーカーが、そこで培った独自な加工法を活かし、受注相手側の図面に従って受注生産する加工サービス企業へと転換した事例であり、単なる部品間での転換ではない。

 この点を追求するためには、工場名鑑といった資料だけでは不十分で、現在まで存在している企業からの聞き取り事例を通して、そもそもの存立形態の変遷をも確認する必要がある、ということである。

2017年11月8日水曜日

11月8日 シャコバサボテンが咲き始めました、

挿し芽をして増やしてきたクリスマスカクタスの1つ、
シャコバサボテンが咲き始めました。

いずれも数年経った株ですが、
たくさんの蕾をつけてくれました。
葉の痛みをあまりなく、サボテンの緑も綺麗です。

ここには咲き始めた5鉢ほどを置きました。
今年、挿し芽を行なった株も、
カニバサボテンを含め15鉢ほど育ちました。
それらの中にも、花芽をつけたものもありますが、
ここまで賑やかにはなっていません。
来年は、株が大きくなり、これらの鉢の仲間入り、
挿し芽をした身としては、期待しています。

11月16日には、さらに賑やかになってきました。