2018年1月19日金曜日

1月19日小論 日経、メディアテックの記事を読んで考えたこと

日経記事「台湾半導体大手、アリババと提携 メディアテック AIで反転攻勢
      スマホ苦境、IOT手応え」(日本経済新聞、2018116p.11)を読んで
渡辺幸男
目次
1 メディアテックの日経記事を読んで、まず考えたこと
   − 半導体産業に対する私のこれまでの認識の甘さ −
2 半導体開発企業の模式的類型化
3 製品開発型半導体企業間での類型による差異の巨大さ
4 上記の類型間での経営判断の内容の差異
5 類型1のメーカーと類型4のメーカーとの最終製品市場展開での差異
付記1 ルネサスエレクトロニクスのURL
    (https://www.renesas.com/ja-jp/2018116日閲覧)からの引用

 1 メディアテックの日経記事を読んで、まず考えたこと
   − 半導体産業に対する私のこれまでの認識の甘さ −
 上記の記事では、台湾のファブレス半導体メーカー、メディアテック(MTK)がスマホでの成長が頭打ちになったことから、AIスピーカーを中国のアリババとともに開発し、同社が、音声認識ソフトや電気製品への指示を伝える半導体を開発していることを紹介している。またシェア自転車に使用される解錠等の通信に使われる半導体も同社が開発したことを紹介している。そこでは、メディアテックが、新たな市場を開発している中国企業とともに、多くの新市場開拓向けの半導体を開発している事実が示されている。
 またその記事に付随して、同社の共同CEOへのインタビュー記事が掲載され、「車向け、日本勢と連携」という見出しの下に、「可能なら車載半導体は日本勢との協力の機会を探りたい。日本の半導体産業は応用や市場開拓の動きが遅かったが、基盤となる技術力は一貫して素晴らしい」と締めくくっている。
 この記事に触発され、私は自らの半導体産業についてのこれまでの認識・理解の甘さに気づいた。他の研究者の方々にとっては当然のことであり、言及されなかっただけのことなのかもしれないが、私にとっては、以下の点の認識・理解が欠落していたと、痛感した。
 それは、半導体産業を、クアルコムやメディアテックに代表されるファブレスメーカーとTSMCを筆頭としたファウンドリとの垂直的社会的分業関係を形成する、製品技術開発専心のメーカーと生産技術開発専心の受託生産者の共存という存立形態と、インテルや東芝に代表される垂直統合型の開発と生産を一体として担う半導体メーカーとに分ける形で、半導体メーカーの存立形態について、もっぱら理解していたことである。しかし、上記に記事を見て、半導体産業のダイナミズムを考えていく上では、そのような形での類型化が誤りであったことに、ようやく気がついた。
 すなわち、メディアテックは、ファブレスメーカーであることは正しいが、そのメーカーとしての意味を私が理解していなかった。それは、メディアテックの主たる半導体開発は受託開発ではなく、自ら新市場開拓を目指した中核半導体の開発メーカーであるということである。「メーカー」というとき、この点はごくごく当たり前のことであるはずだが、それを見落としていた。
 他方で、ルネサスエレクトロニクスは日本を代表する半導体の開発を担う企業であるが、その開発製品の内容(付記として最後に記した同社のURLの引用からも明らかであるが)を見ると、基本的に自動車メーカー等の最終製品メーカーからの受託開発の半導体開発企業である。また、ルネサスエレクトロニクスは、メディアテックと異なりファブレスではなく、生産をも自ら行う垂直統合半導体生産企業である。その意味でもメディアテックと異なるが、それ以上に大きな差異は、開発する半導体が他企業によって依頼されたあるいは企画された半導体の受託開発かどうかの違いがある。すなわち、私がようやく理解したことは、ルネサスエレクトロニクスは、基本的に半導体開発受託サービス企業であり、「メーカー」ではないということである。ルネサスエレクトロニクスのURLの言う「ソリューション」を中心としたビジネスが、まさにそれを指すのであろう。
 最終的な市場、それも新市場のそれの開発を直接念頭に置いて、自らリスクを部分的にでも担う形で新市場向けの半導体の開発を担うのがメディアテックであることは、上記の記事からも明白であろう。それに対して、ルネサスエレクトロニクスについて、私がこれまで仄聞し、またURLを見る限りでは、このような意味での主体的な半導体開発、直接リスクを引き受けての開発が、開発の中核であるようには見えない。
 メディアテックはインテルとファブレスかどうかで大きく異なる。しかし、開発する半導体に関して、その販売についてのリスクを自ら引き受けるものであることについては、両者に差異は少ない。他方、インテルとルネサスでは、同じ垂直統合企業であり、担っている機能は、新製品開発と生産双方であることでは、同一であるが、開発する対象が、自ら新市場を開拓する、あるいは自社製品が組み込まれた製品市場を自ら拡大するために半導体を開発するメーカーがインテルであるのに対し、特定企業からの委託を受けて半導体を開発する半導体開発受託サービス企業なのがルネサスであり、この点で両者は大きく異なる。
 ルネサスエレクトロニクスの業務内容について、本格的に調べることなく、仄聞で議論をしているので、以上の認識から外れる部分もあるかもしれないが、これまで仄聞してきた事実やURLのあり方、そしてメディアテックの蔡力行CEOの「日本の半導体産業は応用や市場開拓の動きが遅かったが、基盤となる技術力は一貫して素晴らしい」という日経の記事に引用された発言から考えれば、このような理解もあながち的外れではないように思われる。
 このように見るならば、メディアテックとルネサスエレクトロニクスとの差異は、主としてファブレスメーカーかどうかにあるのではなく、なんのために誰のために半導体の新製品を開発するのか、開発リスクをどの程度、どのような内容で引き受けているのかで、大きな差異があるということになる。自社が開発する半導体を組み込んだ製品に対する新市場を発見し、開拓するために、最終製品市場での展開をも含めて自ら半導体の開発リスクを背負って展開しているメディアテックと、開発受託サービス企業として委託する側の製品に関する開発それ自体のリスクのみを念頭に開発しているルネサスエレクトロニクスとの差異となる。
 (なお、ここで開発受託サービス企業と言っているのは、開発を受託し、委託側の開発すべき製品やその水準について指示に従い、部品や製品を開発するサービスを提供する企業を指している。また、ファウンドリのTSMCは半導体生産の受託生産サービス企業であり、生産工程の開発等を行うが、製品開発の受託サービス企業ではない。また、取引関係上の力関係を、委託側あるいは受託側にあることで決定されると言ったことを、全く意味していない。言いたいことは、自らによる新市場開拓を意図し、新製品開発に伴う市場リスクを引き受ける開発か、それとも、新製品開発に伴う市場リスクは委託側が担い、半導体を開発する企業は、開発作業というサービスだけを提供するか、この違いを見るべきであるということである。)

2 半導体開発企業の模式的類型化
 私が主として考慮していた、これまでの分類基準の1つは、垂直統合性での類型化である。それは、以下の3類型となる。
 垂直統合型1 かつてのIBMが典型であろう。最終完成製品生産企業の1部門としての半導体生産そして半導体開発が存在する半導体事業形態である。
 垂直統合型2 インテルがその典型であろう。半導体生産専門企業であるが、開発と生産を統合している企業形態である。
 ファブレスメーカーとフォウンドリ クアルコムとTSMCがそれぞれの典型的企業といえよう。半導体開発に専門化した企業と、生産に専門化した企業の社会的分業形態で、半導体開発生産が担われる事業形態である。
 それに対して、筆者がようやく気がついた類型化は、以下の通りである。それは、半導体開発企業が対象とする市場による類型化である。 
 半導体開発を行っている企業の類型化を行えば、以下の4ないし5類型となろう。
類型1 市場一体型開発部門型
 かつてのIBMや日系の総合電気機械メーカーの開発形態であり、自企業内の最終製品向けに開発をしている半導体開発部門である。
類型2 汎用部品自主開発企業型
 東芝のフラッシュメモリーやサムスンのDRAMが典型的であるような、汎用部品としての半導体の開発を行っている企業群である。この多くは、後で見るような理由もあり、垂直統合型の半導体生産企業であり、製品技術の開発と生産技術の開発との双方を同一企業内で行なっている場合が多い。ウエスタンデシタルのフラッシュメモリーのように、生産を他社に全面的に依存する事例もある。しかし、取り分に応じて生産工場子会社へ出資するという形で、事実上、生産技術開発をも行う生産企業としての東芝へ生産を全面委託している。それゆえ、開発と生産の準垂直的統合形態、すなわち汎用部品自主開発企業型の亜種と位置づけることができよう。
類型3 開発委託による受託開発企業型  
 ルネサスエレクトロニクスが典型的であるような、製品メーカー等の企業からの委託に従い半導体を開発している、半導体開発サービス提供を主たる業務とする企業群である。
類型4 巨大特定市場向け自主開発企業型
 特定の大規模最終製品市場向けに半導体を自立的に開発する企業であり、その市場は、多くの場合、巨大化することが見込まれる新規形成市場である場合が多い。自ら巨大化可能性を持つ新市場を発見し、それに対し中核的半導体を開発普及させることで、最終製品市場をそのものの開拓を主導していく企業群である。PCCPUの開発を主導したインテル、スマホのCPU開発を通じスマホ市場の開発の一方を主導しているクアルコム、あるいは中国での巨大な山寨携帯電話市場の形成を主導したメディアテック等が、これに該当する。特定の巨大(新)市場での中核部品としての事実上の標準仕様化を目指し、自社リスクで半導体を開発する企業群である。
 この類型は2つの亜類型に分けられるかもしれない。類型4−1は、インテル型で、PCでの事実上の業界標準化した自社半導体を、長期にわたり高度化開発し、主導している企業である。単に新市場としての成長期のみならず、巨大市場として成熟したのちも、当該市場向けの中核半導体を開発し、当該市場の再生産を主導している企業群である。
 それに対し、類型4−2は、メディアテック型で、山寨携帯電話からスマホ、そして次の巨大化市場の模索といったように、常に新規の巨大化可能市場を模索し、交代する主要市場向けに、必要な中核的半導体を開発提供することを繰り返す企業群である。

3 製品開発型半導体企業間での類型による差異の巨大さ
 このようにどのような市場向けに半導体を開発するかは、ビジネスモデルとして、ファブレスメーカー化するか、受託生産者化するかとは、大きく異なる側面での専門化である。ファブレスメーカー化か受託生産者化かであるかは、開発の方向性が製品技術開発か、生産技術開発か、その方向性で大きく異なることになる。それに対し、同じ製品技術開発を主たる業務としても、上記の類型間では、直接的にどのような市場向けかで大きく異なることになる。それゆえ、開発を担当する半導体企業が引き受けるリスクが、類型間で質量共大きく異なることになる。
 類型1では、当然のことながら、半導体開発部門それ自体としては、ある意味リスクを引き受けることが意識されにくい。すなわち当該半導体が当該企業の最終製品に組み込まれ、その最終製品の市場で販売され、その当該企業の最終製品の売り上げ状況が、半導体を含めた製品開発の是非を決めることになる。当該企業にとって半導体開発は、当該最終製品の開発の一部を構成するに過ぎない。この類型では、リスクを負って開発される最終製品の開発リスクこそが全てあり、半導体開発は、いかに重要であろうとも、あくまでもその最終製品のための1部品の開発に過ぎない。
 それに対して、類型2では、開発される半導体そのものの汎用部品市場での競争力が直接問われることになる。エルピーダメモリーに見られたように、当該分野での先進化に遅れを取れば、当該企業の存立に関わることにもなる。少なくとも汎用部品としての事業は、その開発の全てのリスクを負うことになる。ただし、開発は製品技術と生産技術双方にまたがっているという特徴を持つと同時に、汎用部品市場としての当該半導体市場の成長や変動にも直接曝されることになる。また、競争相手は、当該半導体を開発製造するメーカーに限定される。半導体が組み込まれる最終製品の市場での特定企業の優位や劣位に、その販売が左右されることは、相対的に弱いと言える。
 また、類型3は、委託された開発を受託することであり、開発それ自体の成否と、その対価の妥当性が問題となり、委託側企業からの受託をめぐる競争で、優位に立つかどうか、受託した開発条件の下、いかに開発に関するQCDについて対応するかどうかが課題となる。この意味では、他分野の受託生産企業と同様な位置にあると言える。ただし、これまでの当該部品の生産実績を踏まえた受託生産と異なり、新たな部品の受託開発であることで、QCD面での条件をクリアすることができるかどうかのリスクは、比べ物がない程度に大きくなるとは言える。何れにしても受託開発企業としての、与えられた取引条件内での対応能力こそが、リスクを軽減できるかどうかに関わる問題となる。
 ここでは、直接の顧客である委託側企業からの受託をめぐる受託側企業間競争と、受託後の委託条件内での開発実現こそが、最大の開発をめぐる課題となる。他方で、受託し開発した半導体が組み込まれる製品の市場での委託側企業の成果は、直接的にはリスクとはならない。
 それに対して類型4は、特定の巨大化予想の下にある新市場形成製品向けの中核部品としての半導体開発であるから、自企業内の川下製品向けの開発のように、市場が保証されているわけではない。また、受託開発とも異なり、その開発に対する最低限の対価も保証されていない。さらに既存の汎用部品としての半導体とも異なり、当該市場での競争での優位が即市場の確保となるわけでもない。
 未知の巨大市場の構築に関し、半導体開発企業自らも主導する一部となる。半導体開発企業による、新たに構築される巨大市場向けの製品の中核部品の開発であり、半導体開発の成果についてのリスクは極めて大きいことになる。新市場を形成すること、そして自ら開発した半導体が、その新市場での主要中核部品の1つとなること、このようなことが結果として実現することが必要となる。極めてリスクが大きいが、PC市場形成でのインテル、あるいはスマホでのクアルコム、そして山寨携帯電話やスマホでのメディアテックがそうであるように、成功した時の企業としての成果は、極めて大である。新市場の動向次第では、長期にわたり当該市場の覇者となり、巨大企業化することも可能性として存在する。そのことを象徴する言葉が、PCでの「Intel Inside」であろう。今やインテル製のCPUは、アップル社のマックを含め、ほぼ全てのPCの標準部品となっている (1)    。
 開発の方向性が製品技術か生産技術かで異なることが中心であるファブレスかどうかとは異なり、以上の類型間では、自ら開発する半導体が、どのような市場で誰とどのような競争をしているかで大きな差異がある。また、その結果リスクのあり方や大きさが大きく異なり、これらの類型間での大きな差異となる。

4 上記の類型間での経営判断の内容の差異
 次に、それぞれの類型について、半導体事業として自立した独自の新市場発見開拓という市場戦略を持つという経営が、存立形態として必要不可欠かどうかについてみる。
 まずは、自企業内の完成品の生産のための半導体開発という垂直統合では、半導体事業として経営戦略を保有すること自体が不要である。必要なのは、自社の最終製品に適合した半導体の開発能力である。これ以外のことを追求することは、当該半導体事業の存立形態からして、無意味であるし、川下の最終製品生産販売事業担当によってその必要性を否定されることとなろう。
 また、開発を受託する半導体開発サービス事業を行う企業にとって、必要な経営戦略は、委託側企業からの受託をめぐる優位性の形成であり、委託企業として優先的に対応することに意味がある企業の選択に関わって、最終製品市場の動向は重要だが、自らの経営戦略の中心的課題としての巨大化新市場発見やその開拓の必要性はない。受託企業として委託側企業の要望に沿った開発能力の向上こそ最重要な経営上の課題である。
 汎用部品生産企業にとっては、当該汎用部品の市場の動向の明確な把握と、それをも念頭に置いた投資行動が、まずもって重要である。汎用部品であるがゆえに、巨大化する新市場でも一定の需要が見込め、しかも既存の半導体の延長線上にそれらからの需要も存在する。それゆえ、既存市場の動向と組み合わせての、全体的な動向の一部として新市場形成を念頭に置く必要があるが、自ら発見開拓する必要性はないし、それを主導することも当該半導体事業からはできない。同時に、当該汎用部品の高度化を中心とした競争企業に対する優位性確保が経営の中心となる。なお、当該汎用部品の高度化能力としての開発能力自体は、間歇的に生じる飛躍的発展を含みがちな製品技術と、積み重ね的高度化傾向が強い生産技術の2方向の組み合わせとなる。
 これらに対し、巨大化が見込まれる(新)製品市場の中核部品としての半導体開発企業にとっては、巨大化が見込まれる新製品市場の発見、開拓こそが、経営戦略の中核の1つとなる。その上で、そこでの中核部品としての半導体での自社半導体の優位性形成確保とその持続を目指すことになる。そのために、戦略的市場選択という経営判断と、それに向けての大胆な戦略的投資、そして自社の半導体を製品メーカーに採用させるための独自な活用法の提示等が、決定的に重要となる。同時に、リスクも大きく、経営としての浮沈の可能性も大きいと言える。

5 類型1のメーカーと類型4のメーカーとの最終製品市場展開での差異
 巨大化する可能性がある新市場を発見し、開拓することを目指すという意味では、類型1の最終製品の生産を主とし半導体も自社開発するあるいは類型3の企業へ開発を委託する企業と、類型4の新市場の発見と開発を目指す半導体開発企業とで、差異はない。しかし、ビジネスモデルとしてみれば、PC市場でのアップルとインテルとの関係に例えることができる差異が存在する。インテルのCPUは結果として、マイクロソフトのOS、ウインドウズと一体となって外販され、アップルのマック以外のPCのほぼ標準装備となり、最終製品としてみるならば多様な企業のPCの中核部品として採用されるという結果になった。それに対してアップル社のPCであるマックは、マック独自のOSが採用され、CPUも長く独自な規格でインテル製のCPUを採用しておらず、またほぼ外販もされなかった。マックそのものは、私もそうであるが、かなり価格が高くともマック使用にこだわるマックユーザーをごく少数派として囲い込むのに成功したにとどまった。PCCPUOSでは、それぞれ幅広く最終製品生産企業に提供した、インテルとマイクロソフトの組み合わせからなるウインドウズマシンが多数を占めることとなった。
 このPCでのインテルインサイドを究極の成功モデルとして追求しているのが、メディアテックの戦略であるということができよう。もちろん、メディアテックは、後発半導体開発企業として、単に新市場で使用される半導体を開発するだけではなく、種々なる独自な自社半導体採用促進戦略を、最終製品企業に対して展開している。その1つが、上記の記事でも言及されていたような、レファレンスの付加ということとなろう。中国での山寨携帯電話市場の形成開拓では、基本的に誰でも携帯電話を組み立てることができるよう、多様なサービスを提供する仕組みを作り上げたことが、丸川知雄氏や丁可氏による中国深圳を中心とした山寨携帯電話産業の形成発展の研究で紹介されている(2)
 このような類型1ないし類型3の委託側企業と、類型4の企業との最終製品市場での成果の差異の究極的な姿は、PC市場でのアップル社のマックとウインドウズマシンとの関係と見ることもできよう。
 いずれにしても、私が、メディアテックについての日経の記事を見て、改めて気づいたことは、「半導体開発」を担当する企業や事業であっても、その存立形態により、経営としてのあり方は非常に異なり、結果としてその担うリスクは大きく異なる、ということである。既存の半導体開発企業ないしは半導体開発事業を、半導体開発企業(事業)として一括りにして、その経営と存立可能性を語ることは、産業理解やその発展理解に大きな混乱をもたらすことになる。

付記1 ルネサスエレクトロニクスのURL
    (https://www.renesas.com/ja-jp/2018116日閲覧)からの引用
ソリューション
「当社デバイス製品を各種電子機器にご利用いただくにあたり、推奨デバイスのご紹介、具体的にお試しいただけるコンテンツ、開発パートナー様による各種ソリューションをご紹介いたします。」
製品
「半導体製品ラインナップと、MCU開発環境をご紹介しています。 ルネサスの擁する豊富な製品群と使いやすく高機能な開発環境により、お客様のベストなソリューションを具現化して参ります。」
呉 文精代表取締役社長兼CEOの発言
「ルネサスはインターシルとの事業統合を完了し、グローバルな半導体市場でリーダーとしての地位を高めることができました。この統合により当社は、規模を拡大し、安定した事業運営で、幅広い製品ポートフォリオを提供いたします。そして、グローバルでの強みと半導体の専門知識とを組み合わせて、コネクテッド・ワールドにおけるマーケット・リーダーとのイノベーション創出を促進します。より幅広いソリューションを提供し、お客様と共に、お客様の明日の課題に取り組んでまいります」
 ルネサスエレクロトロニクスのURLを見て、まず、飛び込んできたのは、上記の3つの文章である。これらはいずれも、同社が半導体開発を他企業から受託する企業であり、その受託開発サービス企業として優れていること、委託側企業に役に立つことを強調する文章であると理解した。


(1)  ちなみに、2018119日付のフィナンシャル・タイムズの記事に掲載された図によれば、インテルのMicroprocessor UnitPCCPUに占める比率は、2007年からの10年間で、デスクトップPC80%超から90%超へ、ラップトップPCでは70%超から90%程度へと高まっている。またサーバーでは80%からほぼ100%へと高まっている(R.Waters & H. Kuchler Intel tries to regain its status after chip debate’ Financial Times, 19 Jan. 2018, p.13)。
(2) 丸川知雄「ゲリラたちの作る携帯電話」(丸川知雄『チャイニーズ・ドリーム  大衆資本主義が世界を変える』(ちくま新書、2013年)の第2章)、および、丁可・潘九堂「「山寨」携帯電話:プラットフォームと中小企業発展のダイナミズム」(渡邉真理子編『中国の産業はどのように発展してきた』(勁草書房、2013年)の第4章)を参照。

0 件のコメント: