壬寅元旦
謹 賀 新 年
渡辺幸男
今年も、元気に新年を迎えることができました。本年もよろしくお願いします。
昨年1年間、ほぼ、住まいがある中郡二宮町から出ない生活。出ても中郡大磯町の東海大大磯病院に、ほぼ定期的に三月に一回ほど通院する、あるいは、買い物に近所の市や町のDIYに出掛ける程度でした。会議や学会の多くも、リモートで開催されたので、自宅から出ることなく、多くの方と議論をし、打ち合わせをしました。
昨年は、正月の一族の集まりも中止し、静かな正月、といっても娘家族6名は来ていたので、それなりに賑やかでしたが、いつもよりはですが。また、昨年、多摩川を越えたのは数回、最後は10月に中小企業研究奨励賞審査の際、現物の応募作品を一覧する必要から、第1回専門委員会に出席するため、茅場町まで出かけました。新型コロナのため、ということができますが、元来の出不精であり、自宅での庭いじりと周辺の散歩で毎日を過ごし満足する私にとっては、それほど普段と変わらない日常で、楽しく過ごしたと言えます。
2019年4月に受けた腰椎あたりの骨髄炎の手術、骨髄炎そのものの再発もなく、痛みは全くないのですが、骨髄炎の炎症で圧迫されて神経の一部が傷み、右足に痺れが残っています。平らなところならば、杖を使わず、歩き続けることができるのですが、坂道をそれなりのスピードで歩くためには、杖が不可欠なような状況のまま、この2年半を過ごしています。私の住む二宮町百合が丘は、名前の通り丘にできた住宅地なので、家から出れば、登るか降るかしかなく、坂道を散歩で歩き回るには杖が必携となっています。
手術後、右足の痺れが残ったこともあり、運転中に血圧が上がり、問題が生じる可能性を感じたので、昨年の春、免許の更新を諦めました。そのため、坂の上のほうに住みながら、運転ができず、近所での買い物も、車を使うことはできなくなり、散歩のついでにスーパー、コンビニやドラッグストアに立ち寄る時に行うような状況です。杖をついての移動や買い物、そして妻の運転での買い物、これが日常になりました。
また、中小企業の研究者としての名残りは、中小企業研究奨励賞の審査委員、今年度からは審査委員長ということになりましたが、これが唯一の定期的な研究面の季節労働となっています。10月から翌年3月まで、中小企業研究書を読み、評価をし、選評を書くといった作業を毎年行っています。昨年の10月から、興味深い本も、私にとっては評価できない本も、幾つも読み、私なりの評価原稿を書いてきました。審査委員間の評価が割れる著作も多く、経済部門の主査として、委員会の見解まとめる苦労を、ここ数年繰り返しています。一般の審査委員であったときは、自分の見解をもっぱら主張し、後の始末、まとめは主査にお任せだったのですが、自分が主査となると、そうはいかず、ヒラの審査委員の立場での参加が懐かしく感じられるこの頃です。
また、昨年は、黒瀬直宏、小川正博、向山雅夫の3氏と共著で出した『21世紀中小企業論』の改訂が進行しました。すでに第3版を2013年に出し、定年退職し、講義を持たなくなった私としては、今更中小企業論の教科書を改訂し
ても・・・、と思っていたのですが。まだ現役の仲間から、統計等が古くなっているから教科書として使いにくいので、改訂しようという話が出て、また、毎年のように増刷がなされていることもあり、有斐閣の編集者の賛同も得られ、改訂版を出すことになりました。その作業として、原稿修正、初校校正、第4版用序文執筆といったことを行いました。今年中に、再校の校正を経て、出版される予定です。私の単著は2016年出版の『現代中国産業発展の研究』という慶應義塾大学出版会から出た本で最後ですが、研究者の名残りで教科書の改訂版を出すことになったと言えます。
このような研究者の名残りの仕事、そして庭仕事以外、現在の私の日常の大きな部分を占めるのが、好きな本、好みの分野の本を濫読するということです。大きく2つないし3つの分野の本が気になっています。1つは、近世・近代の東アジア経済史です。これはまだかつての研究者としてテーマに近いのですが、後2つは、大きく離れています。
1つは中国と中央アジアを中心とした古代史と中世史、近年多くの遺跡が新たに発掘され、新たな史料が数多く発見解読されています。これまでになく、その時代の経済的政治的実態が明らかになってきています。素人として、文庫本レベルから科研費による研究の成果物としての著作まで、楽しく濫読しています。学生時代にスウェン・ヘディンの全集を読んで以来気になっていたテーマで、その蒸し返しとも言えます。
今一つは、インカ帝国に代表されるような中南米のスペインによる征服以前の歴史です。これも、近年多くの成果物が出版され、素人にも理解できるような形で成果が示されています。改めて、濫読の楽しさを味わっています。
濫読の対象については、中小企業研究奨励賞の審査のように、文献についての評価を自分なりに行うこと、これは全く必要ありません。当たり前ですが。でも、このような読書を自由にでき、かつ、それを読書の中心としてできるのは、ゼミに入る前の20歳までの時代以来と言えます。本を読むのが好き、しかも理屈っぽいのが大好き、ということを再認識しています。
また、3つのテーマ間のつながりは、私の頭の中にも全くありませんが、好きということは、このようなことだと考えています。
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