2022年9月30日金曜日

9月30日 吉見俊哉著『空爆論』を読んで、考えたこと

 吉見俊哉著『空爆論 メディアと戦争』(岩波書店、202284日)

を読んで、考えたこと

 渡辺幸男

 

 吉見俊哉氏の『空爆論』を、新聞の書評で知り、関心を持ち、早速手に入れ、目を通し始めた。以下は、『空爆論』を読みながら、勝手に考えたこと、そして読み終わってから考えたことである。

 

*吉見俊哉氏の著作で描かれていること、

主として米国の最新の空爆のあり方とその歴史

米軍そして米国の太平洋戦争での日本空爆、朝鮮戦争での朝鮮空爆、ベトナム戦争でのベトナム空爆、そして戦争行為としての不十分さについての反省、そこからの空爆による戦争支配の方式の開発を心掛けた。その結果が、イラク戦争であり、コソボ紛争である。米国軍人の損失を最小限に、敵対軍隊を崩壊させる。ここまでをほぼ完璧に実現した方式、それがドローンによる空爆、アメリカに操縦者はいて、情報技術を駆使して、現地のドローンを操縦し、米国人負傷のリスクを限りなくゼロに近づけた空爆を実行し、目標を破壊し殺害する。それが東京大空襲等で実行してきた米軍の空爆の進化の究極の姿であること、これを解明した研究がこの著作である。

 

*吉見氏の空爆論から見た、今回のロシアのウクライナ侵略

 この吉見氏の議論から今回のロシアのウクライナ侵略を見ると、あまりにも古典的な、アフガン等から学ばず、旧ソ連時代そのままの、ロシアの軍隊の姿が見えてくる。吉見氏が描く「現代」のアメリカの空爆とはあまりにも異なるように見える。

 そこに見えるのは、「プラハの春」の再現可能性を夢見ていた旧ソ連たるロシアの軍事組織とロシア・プーチン政権とも言えるのではないか。

 「プラハの春」の再現可能性の夢とは、旧ソ連タイプのロシア軍が圧倒的な「規模」の軍隊で侵略すれば、チェコのような周辺「衛星国」では反ロシア的政権が崩壊し、親ロシア的政権が擁立される、という幻想の世界、残影の世界である。そして、その夢が完全に崩壊したのがキーウ攻略失敗であったといえよう。

 ウクライナが、イラクではなかったからなのか。それとも、現在のロシアそしてロシア軍が、ベトナム以後の米国そして米軍ではなかったからなのか。吉見氏の議論を踏まえれば、その双方であったようだ。

ウクライナはコソボ紛争の際のセルビアでもなく、米国を中心としたNATO諸国を含めた多くの国々から多大な支援を得ている。また、ロシアもNATO軍ではなかった。少なくとも戦争開始期の戦闘では圧倒的勝利したNATOの戦闘力そして空軍を中心とした先進的な攻撃力(最新鋭の武器と情報システム、それらを総合的に使用する軍事戦略力)をロシア軍は持っていなかった。単なる量的な優越だけの軍隊での侵略であった(と私の得た情報では見えた)。あまりにも、古典的な帝国軍隊、植民地支配権力軍であった。しかも、帝国の俊英ではなく、貧しい人を、そしてそこから明晰な人を選抜することもなく、兵卒として集め、数だけ揃えた、「質の悪い」軍隊であった。ウクライナ現地からの報道を聞く限り、このように見えてくる。

 吉見氏の著作を読んで感じ、理解したことは、まずは、米国の軍隊とロシアの軍隊では、基本的発想が異なるということである。米国の軍隊は、米国人、とりあえずどんな人種であろうとも、米国人の犠牲を最小限にして、帝国的侵略先諸国の屈服へと導く戦略的体系の構築をめざし、それにある程度は軍事的な意味においては成功している。それに対し、ロシアは、帝国内人種差別をも活用しながら、人海戦術で帝国的侵略先諸国を屈服させること、これを厭わない、ということであろう。自国民の人的犠牲に対する、この鈍感さ、これはロシア政府のみならず、スラブ民族と称する人たちのロシア内少数民族出身者に対する鈍感さでもあるようだ。この鈍感さ、第2次世界大戦に勝つために、スラブ民族を中心に膨大な人的犠牲を強いられたことの裏返しなのであろうか。ここに、大きな違いがある。

 その上で、それを実現する近代兵器の開発にそれなりに成功したのが米国である。それに対して、ロシアは、米国と同様な方向での開発をしていない、どころか、それをなすだけの先端的工業基盤の構築に失敗している。あるいは、そのような方向での努力をせずに、一次産品や農産物の生産輸出での豊かさ追求に「逃げた」。安易な道、正統派経済学的発想では比較優位な道を、プーチンは選択し、それに、国民の豊かさの実現という意味では、ある程度の成功を納めた。そして、その延長線上で、ウクライナに「プラハの春」の夢の再現を夢想した。

 しかしながら、現代のロシアは、かつての旧ソ連のような当時の先端的工業生産力に裏付けられた兵器産業を保持していない。しかし、プーチンはそれを知らないのか、あるいはそれを知っているが、それがウクライナ侵略の際に問題になることはないと踏んでいたのか、多分後者であろう。それこそ「プラハの春」の夢再現を夢見ていた、のであろう。短期的な決着を夢想していたが故に。

 

*なぜこのような違いが生じたのであろうか

 ベトナム戦争を経験した米軍と、アフガン戦争とシリア内戦に留まる旧ソ連軍・ロシア軍の経験の差であろうか。米国は、ベトナムで、最後まで傀儡政権を北ベトナムに擁立することができないまま、南ベトナム政府を見放し、ベトナムから撤退せざるを得なかった。常に勝者の側にいた米国が経験した敗退であり、国内的混乱をもたらした敗退であった。それに対し、ロシアはシリアのアサド政権を維持し、アフガンでは、一応社会主義政権をある程度維持し得た。旧ソ連型の軍隊でも、機能していた、と言えるのかもしれない。

 また、なぜ、ロシア空軍は、開戦初期に、ウクライナ空軍を徹底的に叩き、機能不全にしなかったのか。あるいは叩けなかったのか。この点についての疑問の提示は、開戦当初より、日本のジャーナリズムでも存在していた。ロシア政府には、旧ソ連時代の「プラハの春」の夢幻想、「大規模な」軍隊で(規模の大きさだけが取り柄の軍隊でも)軍事侵攻さえすれば、現政権の一挙解体は可能という幻想があったからなのか。それとも、組織として、十分な敵対者把握ができておらず、徹底的に叩きたくとも、できなかったのであろうか。さらには、圧倒的な空軍力の量的差異はあったと言われているが。質的に問題があり、ウクライナ空軍の具体的な展開を把握し、それを徹底的に潰す行動が取れる、情報把握のための最新の仕組みがなかったのであろうか。いずれも該当するように、今の時点、20229月の時点では見えてくる。

 他方で、ウクライナ軍では2014年のクリミア半島と東部2州へのロシア侵攻でのウクライナ政府と軍の対応能力の欠如への反省があり、当時と根本的に在り方が変わっていたと言われている。

確かに、ロシア軍全体の動きを見ていると、高度に情報化した最新鋭軍事組織とは、全く見えない。第2次大戦中の旧ソ連軍と同様に、量的には凄いが、それだけの軍隊なのであろうか。ここ30年の軍事力の情報化に大きく遅れているのが、旧ソ連軍を引き継いだロシア軍、衛星を飛ばし、ロケットを打ち上げることはできるが、自国で生産した半導体を大量に使用し最新情報技術で武装し、それを駆使するための軍事システムとは程遠いような軍隊なのであろうか。

吉見氏が描く、現代的空軍主導の帝国側の侵略戦争、米国の湾岸戦争以後に見られる戦争とは、大きく異なる帝国の侵略戦争、旧型のそれがロシアのウクライナ侵略なのであろうか。

 

 ここまでが、『空爆論』の終章、「プーチンの戦争」を読む前の感想である。

 

*『空爆論』を読み終わって

「終章 プーチンの戦争」で、吉見氏は「ロシア軍の空爆は」「アメリカの空爆がベトナム戦争を経て1990年代以降に推し進めていったパラダイム転換を全面的には受け入れていない」(同書、201ページ)と指摘している。

基本的に、この終章を読む前までの、私のロシア空軍理解を裏付ける議論であった。旧ソ連の持っていた軍事技術での進展の方向性が、空軍のあり方として、米国等と比較し、無人化、ドローン化の方向ではなく、旧ソ連時代からの地上部隊を支援する部隊としての位置付けにあるとされている。

また、2017年に鹵獲されたロシア製のはずの軍事用ドローンを解体すると、そこから見えてきたことは、航続時間が30分と短い低性能のドローンであるにもかかわらず、その主要部品は全て輸入部品であるということであったと指摘されている。そして、「ロシアはもはや、自国の軍事用ドローンの部品すら、自国の技術では製造できなくなってしまったのだ」(同書、202ページ)と、私にとっては大変興味深い指摘を、ワシントンポストの記事を参照しながら、吉見氏は述べている。現代ロシアは、完成品としては自国製(すなわち組立てたのはロシア国内のロシア系企業の工場)であろうとも、軍事製品生産のためでも、主としてロシア製の部品を使って、本格的な軍事ドローンを量産できる状況ではないようである。ベトナム戦争時の米軍と異なり、20222月からのウクライナ侵略におけるロシア軍は、空軍力でウクライナを圧倒し、制空権を完全掌握した上で、侵略を進める状況にはない、と指摘されている。

大規模部隊を動員し、消耗戦で相手を圧倒し、戦闘での主導権を握る、旧ソ連の戦略の延長線上にあるようである。逆に侵略されたウクライナは、コソボ紛争のセルビアやシリアの反政府軍と異なり、ましてやベトナムでの反政府勢力と大きく異なり、NATOからの武器面での支援を受け、それを使いこなすための訓練が可能な軍隊であることもあり、衛星からの情報を利用するなど、現代のIT活用の情報戦で優位に立っていると指摘されている。無差別に侵略するロシアに対し、的確な情報に基づき反撃を行うことで、戦局を変えつつある、というところまでで、今年の8月初旬に発行された本書での吉見氏の指摘は終わっている。

 

*その後の展開

そして20229月にウクライナの本格的な反攻が始まった。一般的な動員をかけない特別軍事作戦で、結果を出そうとしていたプーチン政権は、完全にその戦略に失敗し、ロシアの若者(若者以外も動員されているとの情報もあるが)を「戦争」に幅広く動員するということになった。全面戦争への道を歩むことで、不利な状況を転換しようとするロシアであるが、動員で状況が変わるとは、とても思われない。そもそも、動員する人的な量の不足で、反撃され、後退したのではないのであるから。ただ、人的増員をしないと、後退した戦線自体でさえ持たないのであろう。

 

*ロシア経済と旧ソ連経済

ロシアは、天然資源と農産物が豊かで、大規模輸出が可能な、1次産品、天然資源が豊富な貿易黒字国である。人口約1億4千万人の1次産品依存の上位中所得国と言えるであろう。ただし、ロシアは「豊かな」「先進工業」国ではないのである。ただし、旧ソ連時代までは、先端的な兵器生産能力を持つ、先端的近代工業保有国であった。競争優位の近代工業を保有する国ではなかったが。兵器生産を市場経済とは全く別なものとして、市場経済から切り離し、保護育成し、それに成功したからである。兵器生産のための基盤産業として不可欠な他の近代工業諸部門、特に機械工業関連の財の生産も、先進工業国と市場競争を行うことのない国際的な市場原理が作用する市場圏の外に存在させていたことで、旧ソ連経済圏内で十分自給可能であった。ただし、当時の国民生活も、先進工業国のそれではなく、豊かな消費生活からは程遠かったようである。

しかし、約30年前、旧ソ連の計画経済は解体し、ロシアは西側諸国に市場を開放し、近代工業部門の自国系企業による生産を事実上、あるいは結果的に放棄した。その代わりプーチンは、豊富な天然資源と比較優位にあった農産物を活用し、資源と農業の大国として国民経済のバランスを回復し、それなりの成長を実現した。あくまでも、先端的工業製品や設備機械あるいは中高級日用消費財については、西側諸国そして中国に依存し、その他の工業製品についてもトルコやインドに依存し、それらを獲得するために、その対価として一次産品を輸出するという、工業製品についての海外依存国としての国民経済の豊かさの追求であった。それが、それなりにうまくいき、一人当たりGDPで、日本の7割程度の水準まで到達した。

ドイツは、ロシアの豊かさ追求が、このような達成の経過により生じたがゆえ、ロシアの石油やガスに大きく依存しても、その対価としてロシア経済に不可欠なドイツ製の先端工業製品が存在する以上、ロシア政府はドイツ等からの最新工業製品の輸入展望をなくす可能性が生じるような、無謀な行動は取らず、NATO諸国とも協調的行動をとるであろうと、勝手に想像していたようである。

しかし、プーチンが、どのような長期的展望を持っていたかは分からないが、資源供給の圧倒的部分を対欧州で握ったプーチンは、そのことを切り札に、強引な対外政策を行っても、NATO諸国は、ドイツを先頭に、本格的な先端的工業製品の禁輸を行わないだろうと、全く異なることを考えていたようである。というより、「プラハの春」の夢から覚めていなかった、のかもしれないが。夢が実現したら、西側諸国が今回行った、本格的な禁輸等の制裁処置が実行される以前に、表面的には問題が片付いていたかもしれない。2月末にでも、ウクライナに親ロシア政権が誕生したならば。

いずれにしても、今のロシアは、西側諸国からの工業製品の輸入を止められると、まともにドローン1つ量産し飛ばすことができない工業水準ということになる。

 

*ウクライナ侵略の今後とロシア工業の展望

ここから見えてくるのは、今のロシアは、旧ソ連と異なり、西側諸国に対抗し、自前の工業製品で先端的な兵器を使った戦争を、長期に渡りあうことができるような近代工業を国内に保有していない、ということである。あるいは、主要部品や、独自製品の企画開発能力で、特定の工業製品では先端化している、ということでもない。あくまでも、1次産品生産国としてのそれなりの豊かさ、それもオーストラリアには遠く及ばない一人当たりの豊かさであるが、それを実現しているに過ぎない。いつまで持つのであろうか。戦が始まり、ロシアがウクライナに侵略開始をし、まだ7か月である。兵隊の頭数を維持することは、動員で、反発を受けながらも、当面可能であろう。

しかし、誘導兵器の量産を、どう維持するのであろうか。ウクライナには米国をはじめとする西側諸国の近代工業がついている。しかし、ロシアに多少なりとも協力する可能性のある中国やトルコにしても、個別先端的企業は、自国市場が最優先であるとしても、海外市場での競争力があるのであれば、ロシア市場に西側市場以上の魅力は全く感じておらず、西側諸国にロシアと西側との市場選択を迫られれば、大きさから言っても西側市場を選ぶことは、技術の問題を抜きにしても、企業として当然のことといえよう。

ここから見えてくることは、プーチンの核使用についての脅しの真実味の昂まりである。他に手がなくなり、追い詰められたプーチンが、権力を握り続けていれば、最後には戦術的に侵略を維持するには核使用しかない。

が、核を使用して何を得ようとしているのか。どこの誰に対して戦術核を使用するというのであろうか。建前としては、「ネオナチ」を駆逐することであったはずである。しかし、核が実現することは、当該地域の「ネオナチ」を「退治する」ことや「追い出す」ことではなく、当該地域の住民すべてを抹殺することであり、周辺地域の住民、ロシア領、あるいはロシア領に編入した地域の住民の多くをも、長期的な病に陥らしめることなのである。

また、核戦争が生じないとしても、西側諸国の経済制裁は、解除されるどころか、一層強化されるであろう。数年単位で今以上の経済制裁が実行され、ロシア経済は、先進工業製品や国内生産のために不可欠な部品類について、正規ルートでの調達はますます困難となる。ロシアの航空会社各社は、今やその運航機体は、ボーイングやエアバスに依存しているようである。どうやってメンテナンスをするのであろうか。老朽化した機体から部品を集め、まだ新しい機体の交換パーツとして利用する。あるいは、海外のグレイ市場から中古を含めた部品調達を進める。後者については、現在もかなりやっているようであるが、どこまで調達が可能か、まともなそれが可能か、疑問である。

乗用車については、旧ソ連時代のラーダ(シートベルトやABSがついていない車)に戻って量産を再開するといったことが、6月初めに報じられていたが、どこまで実現したのであろうか。ラーダ関連工場で、旧ソ連時代のようなラーダのためでも部品が足りないとの報道もなされている。旧ソ連にはできた量産、これは部品を含め国際競争力があるかどうかは別に、旧ソ連経済圏内で量産できる生産設備と熟練労働力、すなわち生産力基盤が全般的に存在していたから可能となっていた。全般的な生産力基盤を維持することをやめてから、既に30年経っている。生産基盤が全般的な形で残っているわけがない。

ウクライナ侵略直前で、国産ラーダは年産30万台規模で存在していたようだが、当たり前のことだが、市場原理に従って、必要な部品でより安く手に入るものは輸入に依存していたであろう。旧ソ連で全く作っていなかったABSやナビなどでは当然だが、旧ソ連時代には旧ソ連圏内で量産していた部品の全てが、依然としてロシア国内で量産されていたとは、全く考えられない。輸入への代替は、全てではないが、多くの部品で進んでいたであろう。外資系に買収され、市場原理に従う存在として、ラーダさえも生産されていたのだから。

一体どこで、どのようにして、これらの部品を年産10万台といった規模でロシア国内において改めて量産するのであろうか。試作的に何百か作るのであれば、可能でも、これでは、価格的にべらぼうな車になり、ラーダの価格がベンツの価格になってしまう。量産するとなれば、専用工場への設備投資、そのための熟練労働力の確保、といった多くの設備と人材への長期を睨んだ投資が必要となる。誰が、旧ソ連レベルのラーダのために、長期を睨んで設備投資を行うのであろうか。

 

*ロシアからのノルドストリームのガスパイプラインの爆破

ロシアからの天然ガスの主要供給源であるノルドストリームの天然ガスパイプラインが、デンマーク近くの海中で爆破され、ガスが噴き出している。ロシア系のテロによる爆破とも報じられているが、欧州へのロシアからのガスパイプラインが爆破されたことで、大量のガスが漏れていることが、2022928日の新聞で報じられた。このことは、何を意味しているのであろうか。ロシアからの欧州へのガス供給を実際に止めるために、ロシアが意図的に爆破したというのであろうか。しかし、これにより、ドイツをはじめヨーロッパ諸国は、この冬、ロシアからのノルドストリームの天然ガス供給に依存するな、ということを強制的に指示されることとなるであろう。

この冬、無事越えることができるかどうか、ここでロシアからの天然ガスを別ルートで求め、制裁を解除するか、制裁を維持し、ロシアからのガスがないなかで、EUの人々はロシアへの妥協を求めず、制裁を支持するのであろうか。まさにドイツの人々をはじめとして、EUの人々に最後通牒が、ロシアから突きつけられたということかもしれない。ロシアからのEUへの豊富なガス供給とロシアに対する制裁維持とは両立不可能である。わかっていたことだが、実際に物理的困難により、ロシアからの天然ガスに依存する選択肢がなくなるということが生じたのである。どうなるのであろうか。

ロシアの予備役動員による混乱と、冬が近づくEUの天然ガス不足、どちらが先に決定的な方針転換をもたらすのか。まさに正念場である。

いずれにしても、先進的な工業基盤を、市場経済化で喪失し、国際市場からの輸入に依存するようになったロシア経済は、今回のような本格的な西側諸国による経済制裁に対し、中長期的に耐えることができる経済ではない。これだけは確かである。旧ソ連の持っていたソ連経済圏内で完結した近代工業生産体制は、今や存在しないのである。しかも、先進的な工業部門ほど、西側諸国や中国に依存しているのが、今のロシアである。旧ソ連並みのラーダの生産を本格化すると言って、3ヶ月余が経過している。旧型のラーダが出回りはじめたという話は聞かない。近代工業の基盤産業を、大きく国際市場に依存するようになったロシアは、旧ソ連で可能であった工業製品の工業生産でさえ、経済制裁下ではほぼ不可能なのであろう。

 

*冬来たる

厳しいウクライナの冬がやってくる。この冬を、ロシアそしてEU諸国は、どう越すのであろうか。民主主義国の強さと弱さが露呈するかもしれない。独裁国家のロシア、独裁ゆえに政治的に強固なのであろうか。

我慢くらべの一冬、インフレによる生活水準低下に直面する我々にとっても無関係ではない。が、ウクライナの人々の冬越しが、最も厳しいことも当然だ。この冬、それぞれがどう対応し、方向を維持するのか、それとも大転換するのか。その覚悟が問われることになる。

 

*補足

 なお、現在のロシアの工業の状況については、本ブログで、これまで何回かロシア工業について、藤原克美氏のロシア繊維工業を中心としてロシアの工業の現状を解明した著作をはじめとした諸著作、ジェトロのロシア工作機械工業の現状についての調査報告等の調査報告、さらには新聞記事等を紹介し、コメントする形で、私なりの見解を示してきた。224日のロシアのウクライナ侵攻の後に書いたロシアに関する本ブログでの私のノートには、その際に利用した参考文献や記事の出所も掲載した。それらも踏まえて、本ノートは書かれている。もし、典拠等について関心がおありならば、ここ半年余りの私の本ブログでのロシア関連のノートをご覧いただきたい。

 なお、これまでのノートを踏まえたということで、本ブログでは、間接的に参照した著作や記事についての一覧を示していない。ご了承いただきたい。

2022年9月21日水曜日

9月21日 我が家の庭のサルビアと芙蓉

我が家の庭、芙蓉とサルビアが花盛り

サルビアの方は、冬を苗で越したサルビアを地植えしたもの、
肥料をたっぷり入れて植えたせいか、
今年は夏前から大きく育ちましたが、
何せ、今年の暑さ、日差しにも負け、かなり花が色褪せていました。
ここへ来て、「秋」が近づき、サルビアの花の朱色が目立つようになりました。

芙蓉の花は例年より、かなり遅れて、盛りを迎えました。
暑さがひと段落してからの盛り、
例年より遅れています。
サルビアともども、
蕾はたくさんついており、まだしばらく楽しめそうです。